第六章 ── 卒業式・旅立ちのうた
No.16 表題曲

越えてゆけ

作詞・作曲:弓削田健介
楽譜集 本文p.86

重ねた時も、さみしさも、抱えたまま前へ。新しい自分へ踏み出す人の背中を、そっと押す歌。

Listenきいてみる
旅ワンくん
子どもも大人も・・・人生には、その時々で、越えていかないといけないことが、たくさんあるね。そんなときに、そっと口ずさみたい歌だワン── 旅ワンくん
越えてゆけ 合唱演奏
Lyrics歌詞

越えてゆけ 重ねた時を
越えてゆけ そのさみしさを
めぐる風、背中を押したなら
心の連れてく場所へ

1番

晴天と夕焼けの狭間にいるような
半端な場所から一歩も動けない

そんな日がいつからか続いて来たのに
僕は知らんぷりで大人になれない

地平線の先には 素敵な明日が見える
遠ざかる雲一つ 残して進むことできるか

越えてゆけ 重ねた時を
越えてゆけ そのさみしさを
めぐる風、背中を押したなら
心の連れてく場所へ

2番

がむしゃらに生きてきた少しの憧れと
ちっぽけな誇り 胸の奥に抱いて

本当は気付いてた「僕、変わらなきゃ」って
だけど振り返るたび 懐かしい君がいる

越えて行け 重ねた時を
越えて行け そのさみしさを
めぐる風、背中を押したなら
心の連れてく場所へ

FOR TEACHERS & CHILDREN

先生と子どもたちのための資料集

Overview曲の概要
おすすめの場面卒業式・立志式・旅立ち
対象の目安小学校高学年〜中学生同声二部版はこちら混声三部版はこちら
テンポ・拍子♩=80・主に4/4移行部に2/4、rit. と a tempo
音域B3〜F5中央の「シ」から、高い「ファ」まで
演奏時間4分30秒
Materials楽譜・音源
山田聡先生
楽譜には、歌い方のヒントがぎっしり書き込まれています。音源と両方そろうと、練習の道しるべになりますよ。── 山田聡先生
楽譜・CD
作品集「越えてゆけ」表紙
楽譜/参考演奏CDはこちら

作品集「越えてゆけ」

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混声三部版は、作品集「HAPPY MUSIC」に収録 ── Amazonで見る

練習用音源
指揮と演奏の参考
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Words to Expression歌詞の解説
ボス先生(中学校国語の先生)
言葉の意味は、一つに決めなくていいんです。「こうも読める」が見つかるたび、歌い方も増えていく。詩を読むのと、同じですね。── ボス先生
作者の説明で確認できること歌詞から広がる言葉の可能性
歌詞全体から読める一つの可能性

過去を捨てる歌ではなく、過去を持ったまま進む歌。

歌詞は「時」や「さみしさ」を消すとも、置いてゆくとも言っていません。「重ねた時」「そのさみしさ」を越えてゆく。これまでを否定せず、新しい自分へ動こうとするところに、この歌の深さがあります。

気になる言葉を選んで、開いてみてください。

「越えてゆけ」
言葉の可能性命令の形ですが、「誰が、誰に」は書かれていません。自分への言葉、友達への励まし、仲間同士の呼びかけとしても読めます。繰り返すたびに、同じ言葉の届け先が変わる可能性があります。
歌い比べ「今の『越えてゆけ』は誰から誰への言葉?」自分に言う声、友達へ届ける声、みんなで支える声など、複数の歌い方で違いを聴きます。
「重ねた時」
「そのさみしさ」
言葉の可能性「重ねた」には、過ぎた時間が層になって今の自分をつくる感覚があります。また「その」は、さみしさの理由を言い切らず、聴く人それぞれの経験が入る余白を残します。
歌い比べ「二つの言葉は、軽く手放すのか、大切に抱えて進むのか」。言葉を短く切る歌い方と、一息でつなぐ歌い方を比べます。
「めぐる風」
「背中を押したなら」
比喩の可能性風は目に見えませんが、人を動かします。出会い、季節、誰かの言葉、偶然のきっかけなどにも置き換えられます。「押した」ではなく「押したなら」なので、動き出す直前の一瞬も残っています。
歌い比べ「この風は強い風? そっと吹く風?」まず息だけで風の流れをつくり、その息を保ったまま言葉と旋律を乗せます。
「心の連れてく場所へ」
言葉の可能性「自分が心を連れていく」のではなく、心のほうが自分を連れていくような表現です。頭で決めた目的地より先に、内側の願いが進む方向を知っている、とも読めます。
歌い比べ「声はどこへ向かっていく?」音量だけを大きくせず、最後の「へ」まで息と視線を遠くへ運びます。
「晴天と夕焼けの狭間」
「半端な場所」作者の説明
歌詞の中心にある対比作者は、青空と夕焼けが美しいグラデーションをつくる一瞬を「今しかない、時のきらめき」と説明しています。外から見れば美しい変化の途中なのに、本人には「半端」に感じられる。その見え方の差が、動けなさを深くしています。
歌い比べ「同じ場所が、なぜ『美しい狭間』でも『半端な場所』でもあるの?」前半は色が移り変わるようにレガートで、後半は足が止まる感覚で歌い、対比をつくります。
「知らんぷり」
「大人になれない」
言葉の可能性「知らない」のではなく、気づいているのに気づかないふりをしている言葉です。ここでの「大人」は年齢だけでなく、変化や責任を引き受けることの比喩としても考えられます。
歌い比べ「誰に聞かせる言葉? 心の中の独り言?」まず自然な声で読み、子音を強くしすぎず、内側へ問いかける響きで歌います。
「地平線」
「遠ざかる雲一つ」作者の説明+読み
昨日と明日の比喩作者は「遠ざかる雲」を昨日までの自分と説明しています。一方、地平線は見えていても、近づくほど先へ続く境目です。「雲一つ」という具体的な像が、すべてを忘れるのではなく、一つの過去を見送りながら進む姿をつくります。
歌い比べ「目線は雲と地平線のどちらに向く?」雲を見る声から、地平線を見る声へ視線と響きを移し、「できるか」は答えでなく問いとして残します。
「少しの憧れ」
「ちっぽけな誇り」
大きさを表す言葉「がむしゃら」という強い言葉のあとに、「少し」「ちっぽけ」と小さな言葉が並びます。大きな自信ではなくても、自分を支えてきた本物の願いと誇りが胸の奥にある、と読めます。
歌い比べ「小さいから弱いのか、小さくても大切なのか」。英雄的に大きく歌う方法と、温かく胸の内に保つ方法を比べます。
「僕、変わらなきゃ」
「懐かしい君」作者の説明+読み
変わりたい自分と、変わりたくない自分作者が示した二番の核です。引用符の中だけ急に話し言葉になり、心の声が直接聞こえます。「君」が誰なのかは決められていないため、人、場所、過去の自分、共に過ごした時間など、言葉を根拠に複数の読みを残せます。
歌い比べ「『君』を思うとき、前へ進む力は弱くなる? 深くなる?」せりふとして読んでから歌い、懐かしさと決意の両方が聞こえる音色を探します。
AI Picture Story学校での取り組み例

AIと対話しながら、
歌詞から生まれた物語を一枚の絵に

こなっしー先生(小梨貴弘先生)
AIはたくさんの案を出してくれます。でも「これだ」と選ぶのは、歌を聴いた自分の心。友だちと絵がちがうほど、面白いんです。── こなっしー先生
合唱曲「越えてゆけ」の歌詞を七つの場面で描いた一枚絵。少年が立ち止まり、歩き出し、父との思い出を抱いて、最後に仲間と歌う物語
画像を押すと大きく表示できます。これは一つの解釈例です。同じ歌を聴いても、思い浮かぶ主人公や風景、色、物語は一人ひとり違います。

この一枚ができるまで

AIと対話しながら歌詞の意味のまとまり、場面の順番、主人公の気持ちを一つずつ確かめていきます。「懐かしい君」を過去の自分と捉え、父との記憶を重ねた物語は、この制作で生まれた一つの表現例です。最初から完成形を求めず、絵を見て「ここは違う」「この思い出を加えたい」と言葉にしながら練り上げていきましょう。その過程で、子どもたちが自分らしい歌詞の解釈を深めることができます。

学校では、こんな形で取り組めます
INDIVIDUAL

一人ひとりの物語をつくる

心に残った歌詞を選び、自分が思い浮かべた主人公、風景、色をAIとの対話で一枚絵にします。完成した絵の違いが、そのまま歌の受け取り方の違いになります。

GROUP

グループで場面を持ち寄る

歌詞を意味のまとまりに分け、一人一場面ずつ案を出します。なぜその構図や表情にしたのかを話し合い、最後に一枚の絵物語へまとめます。

CLASS

クラスに一枚を残す

学級合唱で大切にしたい言葉を出し合い、担任や音楽の先生が対話をまとめます。卒業前には、そのクラスだけの「越えてゆけ」を教室に掲示できます。

進め方の一例

聴いて、言葉を選ぶ

歌を聴き、心が動いた歌詞と、その理由を短く書きます。最初に自分で感じる時間を大切にします。

場面を言葉にする

誰が、どこで、どんな表情をしているか。浮かんだ色や光もAIへ伝えます。

案を比べ、話し合う

画像を作る前に場面案を読み、歌詞に合っているか、同じ構図が続いていないかを確かめます。

作って、直して、語る

一度作った絵を見て対話を続けます。最後に「なぜこの絵にしたか」を自分の言葉で伝えます。

ChatGPTへの最初の指示(プロンプト)例

合唱曲「越えてゆけ」を聴いて、心に残った歌詞と、そのとき浮かんだ場面をまとめました。この曲を五〜八場面の一枚絵にする案を考えてください。各場面について「歌詞の意味」「絵にする瞬間」「人物の表情」「色と光」を提案し、画像を作る前に私へ確認してください。私の解釈を大切にし、違う考えを勝手に決めつけないでください。
大切にしたいこと:AIの提案をそのまま正解にせず、歌を聴いた自分の感じ方を中心にします。画像内の歌詞は間違うことがあるため、最後は原文と一文字ずつ照合します。学校や自治体の生成AI利用ルールに沿って行ってください。
Teaching Tips指導のコツ
ともちゃん先生
ぜんぶ一度にやらなくて大丈夫。クラスに合いそうなものを、今日はひとつだけ試してみてください。── ともちゃん先生

5〜12小節:16分音符は、歌詞を話すところから

「こ・え・て・ゆ・け」を自然な速さで話し、音程を付けます。最初の音ではなく「け」まで一息で運びます。

13〜32小節:休符を「聴く時間」にする

Iだけ、IIだけ、ユニゾンへ移る構成です。歌わないパートは相手の言葉と次の入りを心の中で歌います。

50小節:転調後の開始音だけを先に取る

六つのフラットへ変わります。新しい和音→各パートの開始音→「越えてゆけ」のまとまり→前から接続、の順で練習します。

62〜68小節:発展版はブレス計画を決める

長い「ah」はパート内で三組に分けても構いません。高音を押さず、響きを息でつなぎます。

11小節:unis.とdiv.の音程を細かくチェック

ユニゾンから二声に分かれる切り替わりは濁りやすい場所です。分かれる前後だけを取り出して、音程をていねいに確認します。(雑誌「教育音楽」より)

全体:「越えてゆけ」のKの発音をていねいに

何度も登場する大切な言葉です。「こ」の前に小さな「っ」を入れるつもりで歌うと、子音がすっと立ちます。(雑誌「教育音楽」より)

Curriculum指導要領に沿ったポイント
フルティ先生(古川敏子先生)
指導要領って堅そうに見えるでしょ?でも、そこさえ押さえておけば、あとは自由なのよ。根拠を持って歌えることが、子どもの自信になるの。── フルティ先生

「越えてゆけ」は、歌詞の意味を味わうことと、音楽の仕組みを聴き取ることを切り離さず、子ども自身が「こう歌いたい」という思いや意図へ結び付けやすい教材です。

学習指導要領の言葉で表すと

歌詞・音楽の構造・歌い方を往復しながら、根拠のある表現をつくれる合唱曲。

「美しい狭間」と「半端な場所」という歌詞の対比、サビの反復、IからIIへの受け渡し、ユニゾンから二部合唱への広がり、最終サビの転調が、曲想の変化を耳で確かめる手がかりになります。感じたことを話し、歌って試し、聴いて選び直す学習を組み立てられます。

知識・技能

歌詞と音楽の構造が、曲想を生むことを理解する

歌詞の内容だけでなく、反復、声部の交代、音の重なり、転調、速度の変化を結び付けて聴きます。さらに、呼吸と発音に気を付け、各声部・全体の響き・伴奏を聴いて歌います。

この曲で見取れる姿:「転調したから、最後の『越えてゆけ』が新しい場所へ踏み出すように聞こえた」など、感じた理由を歌詞と音楽の両方で説明できる。

思考・判断・表現

どのように歌うかについて、思いや意図をもつ

「誰から誰への『越えてゆけ』か」「風は強いか、そっと吹くか」などを考え、音色、強弱、息、フレーズを変えて歌い比べます。違いを聴き、歌詞と曲の特徴にふさわしい表現を選びます。

この曲で見取れる姿:「『心の連れてく場所へ』を遠くへ届けたいので、最後の『へ』まで息をつないだ」のように、表現の意図と方法を結び付けられる。

主体的に学習に取り組む態度

仲間と試し、聴き、表現を更新する

一度決めた歌い方を正解にせず、録音や別パートの声を手がかりに改善します。自分の考えを伝え、異なる解釈や歌い方のよさを認めながら、合唱全体の表現をつくります。

この曲で見取れる姿:主旋律を生かす音量を仲間と探し、聴き合って見つけたことを次の練習へつなげている。

〔共通事項〕×「越えてゆけ」対応表
〔共通事項〕の視点楽譜・歌詞にある手がかり授業で行うこと深まる学び
音色・強弱同じ「越えてゆけ」が、曲の中で繰り返される。自分への声、友達への声、仲間の声として歌い比べる。同じ旋律でも、届け先と音色で曲想が変わることを確かめる。
リズム・フレーズ5〜12小節の16分音符と、言葉が前へ進むまとまり。ことば読みから歌へ移し、「け」まで一息で運ぶ。リズムと日本語の発音・語感を結び付ける。
音の重なり
縦と横との関係
13小節からI、21小節からII、29小節でユニゾン、33小節から二部へ。歌う側と聴く側を交代し、主旋律と副次的な声の役割を確かめる。各声部の役割が変化し、全体の響きをつくることを理解する。
反復・変化サビが繰り返されながら、声部構成と意味が変わる。最初・中間・最後のサビを録音し、違いと理由を話す。反復が「同じ」ではなく、物語と表現を前へ進める仕組みだと捉える。
調・和音の響き50小節で調号が変わり、最終サビへ進む。転調前後を聴き比べ、景色や気持ちの変化を言葉にする。調や和音の変化と、「新しい場所へ進む」曲想を関わらせる。
速度・拍58〜61小節のrit.、2/4、a tempo。歌わずに指揮で拍を共有してから、言葉を入れる。速度や拍の変化が、ためらい・決意・前進の感じを生む可能性を試す。
題材名・題材の目標例

題材名の例

歌詞と音楽の変化を結び付け、思いの伝わる合唱表現をつくろう

対象の目安:小学校第5・6学年。声や音域、授業時数、児童の実態に合わせて扱う範囲を調整します。

題材の目標例

  • 曲想と音楽の構造、歌詞の内容との関わりを理解し、呼吸・発音に気を付け、各声部や全体の響きを聴いて歌う。
  • 音色、強弱、音の重なり、反復、変化などを聴き取り、それらと歌詞から感じ取ったことを関わらせ、どのように歌うかについて思いや意図をもつ。
  • 仲間と歌い比べ、互いの表現のよさを認めながら、合唱表現をよりよくしようとする。

根拠資料:文部科学省 「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 音楽編」 第3章第3節「第5学年及び第6学年の目標と内容」歌唱、〔共通事項〕、歌唱教材選択の観点。ここに示した題材目標・活動は本曲用の提案例です。各学校の年間指導計画と子どもたちの実態に合わせて調整してください。

Difficulty Mapこの曲の難所マップ
大志くん
つまずく場所は、だいたいみんな同じなんです。先にわかっていれば、怖くない。ひとつずつ越えていきましょう!── 大志くん
5〜12小節
冒頭のサビ
楽譜上の難所16分音符の上行形と、ずれた入り。9小節付近から二声へ分かれる。
練習順ことば読み→音程を付ける→二声を別々に歌う→「け」まで一息で重ねます。
13〜20小節
Iのみ
構成上の役割第一声部が旋律を受け持ち、IIは休符が続く。
聴く役割IIは歌詞を目で追い、旋律の行き先と次の入りを心の中で歌います。
21〜28小節
IIのみ
構成上の役割今度は第二声部へ旋律が渡る。1番と2番で言葉のリズムも異なる。
直し方IとIIを交代で聴き、どちらの言葉も同じ速さで前へ進むか確認します。
29〜44小節
ユニゾンから二部へ
楽譜上の変化29小節で一つになり、33小節から独立、37小節から歌詞と「ah」が重なる。
直し方ユニゾンで響きをそろえてから、下声を半分の音量で加え、主旋律が聞こえるか録音します。
50〜57小節
最終サビの転調
最大の音程難所調号が六つのフラットへ変わり、前の調の感覚を引きずりやすい。
練習順新しい和音→開始音→パート別→49小節から接続。伴奏者とも別に合わせます。
58〜61小節
rit.・2/4・a tempo
合奏の難所減速、2拍子、元の速さへの復帰が短い間に続く。
直し方指揮だけで通し、2拍子の一拍目と a tempo の位置を全員で指差して確認します。
62〜68小節
発展版終結
発展課題変ロ長調へ進み、入りがずれ、最後は長い「ah」の和音を保つ。
選択とブレス標準版との違いを聴き比べる。発展版はパート内を三組に分け、カンニングブレスを計画します。
Teachers' Practice先輩先生の実践
天野朝代先生
先生方の小さな工夫が、となりの学校の宝物になります。この歌の実践、ぜひ聞かせてください。── 天野朝代先生
この場所には、これから先輩先生方の実践(歌い方・場の工夫・子どもたちの姿)が並びます。

実践者募集

この歌を学校で扱ってくださった先生、歌い方や場の工夫など、ほかの先生にもシェアできる資料をお持ちの先生、ぜひご連絡ください。集まり次第、この場所に掲載していきます。

実践・資料を送る

ボタンでメールが開かないときは、こちらへ:yuge@mbfc.or.jp

Story作者の言葉
ゆげちゃんと旅ワンくん
この歌が生まれるまでのこと、すこしだけ話させてください。── ゆげちゃん

この曲集の表題曲になった「越えてゆけ」は、僕が音楽活動を始めてからの十年のあいだ、いちばん多く「楽譜がほしい」と声をかけてもらった歌です。当時はまだ出版していなかったので、そのたびに自宅で楽譜を印刷して、お送りしていました。コンサートで歌うと、終わったあとによく声をかけていただく、僕自身もとても思い入れの深い一曲です。

ただ、この歌はリズムが少し複雑で、音域も広くて、なかなか「決定版」と呼べる形を作れずにいました。たくさんの人に歌ってほしいのに、難しくて手が届かない――そのもどかしさが、ずっと心のどこかにありました。

そこである時、「中学生なら歌えるかもしれない」と一念発起して、音域をしぼり、一番をユニゾンにして、覚えるハモリを減らして、なるべく取り組みやすい形に作り直しました。それが教育音楽の中学版に載り、作品集「HAPPY MUSIC」にも収めてもらえました。やがて「小学校でも歌いたい」という声が届いて、同声の版が生まれました。エンディングは、あっさりと終わる形と、最後にぐっと盛り上がって終わる形の、二種類を用意しています。

歌詞のなかの「晴天と夕焼けのはざま」は、青空と夕焼けが美しいグラデーションをつくる、ほんの一瞬の空のことです。今しかない、時のきらめき。けれど、その美しさのただ中にいる本人は、なかなかそれに気づけないものです。歌は「半端な場所から一歩も動けない」と続きます。そして「遠ざかる雲」は、昨日までの自分のこと。それを見送って、「越えてゆけ」と歌います。

二番は、変わりたい自分と、変わりたくない自分のあいだで揺れる気持ちを歌っています。一歩前に進もうとするたびに、「ああ 懐かしい君がいる」。それでも、その思い出ごと抱きしめて「越えてゆけ」と歌うのです。新しい自分に出会おうとしている人の背中を、この歌がそっと押せたらと願っています。立志式や卒業式など、誰かが一歩を踏み出す場面で歌ってもらえたら、これほどうれしいことはありません。

これまでたくさんの人に歌っていただいてきたこの歌を、ようやくこうして曲集の表題曲としてお届けできることが、僕はとてもうれしいです。今回のCDでは、合唱版(むさし野ジュニア合唱団「風」)と、僕自身が歌った作者オリジナル版を、聴き比べていただけます。

この歌には、弟がいます。立志式の歌として広く歌われている「次の空へ」です。どちらも、新しい自分に出会うために決意をする人の、背中を押す歌です。

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Credit収録
詞・曲
作詞・作曲:弓削田健介
第六章 卒業式・旅立ちのうた
録音
むさし野ジュニア合唱団「風」(指導:前田美子)