一人ひとりの物語をつくる
心に残った歌詞を選び、自分が思い浮かべた主人公、風景、色をAIとの対話で一枚絵にします。完成した絵の違いが、そのまま歌の受け取り方の違いになります。
重ねた時も、さみしさも、抱えたまま前へ。新しい自分へ踏み出す人の背中を、そっと押す歌。

越えてゆけ 重ねた時を
越えてゆけ そのさみしさを
めぐる風、背中を押したなら
心の連れてく場所へ
晴天と夕焼けの狭間にいるような
半端な場所から一歩も動けない
そんな日がいつからか続いて来たのに
僕は知らんぷりで大人になれない
地平線の先には 素敵な明日が見える
遠ざかる雲一つ 残して進むことできるか
越えてゆけ 重ねた時を
越えてゆけ そのさみしさを
めぐる風、背中を押したなら
心の連れてく場所へ
がむしゃらに生きてきた少しの憧れと
ちっぽけな誇り 胸の奥に抱いて
本当は気付いてた「僕、変わらなきゃ」って
だけど振り返るたび 懐かしい君がいる
越えて行け 重ねた時を
越えて行け そのさみしさを
めぐる風、背中を押したなら
心の連れてく場所へ
混声三部版は、作品集「HAPPY MUSIC」に収録 ── Amazonで見る
スマホでこのQRから「世界を旅する音楽室」公式アカウント @cnl6351r
歌詞は「時」や「さみしさ」を消すとも、置いてゆくとも言っていません。「重ねた時」「そのさみしさ」を越えてゆく。これまでを否定せず、新しい自分へ動こうとするところに、この歌の深さがあります。
気になる言葉を選んで、開いてみてください。
AIと対話しながら歌詞の意味のまとまり、場面の順番、主人公の気持ちを一つずつ確かめていきます。「懐かしい君」を過去の自分と捉え、父との記憶を重ねた物語は、この制作で生まれた一つの表現例です。最初から完成形を求めず、絵を見て「ここは違う」「この思い出を加えたい」と言葉にしながら練り上げていきましょう。その過程で、子どもたちが自分らしい歌詞の解釈を深めることができます。
心に残った歌詞を選び、自分が思い浮かべた主人公、風景、色をAIとの対話で一枚絵にします。完成した絵の違いが、そのまま歌の受け取り方の違いになります。
歌詞を意味のまとまりに分け、一人一場面ずつ案を出します。なぜその構図や表情にしたのかを話し合い、最後に一枚の絵物語へまとめます。
学級合唱で大切にしたい言葉を出し合い、担任や音楽の先生が対話をまとめます。卒業前には、そのクラスだけの「越えてゆけ」を教室に掲示できます。
歌を聴き、心が動いた歌詞と、その理由を短く書きます。最初に自分で感じる時間を大切にします。
誰が、どこで、どんな表情をしているか。浮かんだ色や光もAIへ伝えます。
画像を作る前に場面案を読み、歌詞に合っているか、同じ構図が続いていないかを確かめます。
一度作った絵を見て対話を続けます。最後に「なぜこの絵にしたか」を自分の言葉で伝えます。
合唱曲「越えてゆけ」を聴いて、心に残った歌詞と、そのとき浮かんだ場面をまとめました。この曲を五〜八場面の一枚絵にする案を考えてください。各場面について「歌詞の意味」「絵にする瞬間」「人物の表情」「色と光」を提案し、画像を作る前に私へ確認してください。私の解釈を大切にし、違う考えを勝手に決めつけないでください。
「こ・え・て・ゆ・け」を自然な速さで話し、音程を付けます。最初の音ではなく「け」まで一息で運びます。
Iだけ、IIだけ、ユニゾンへ移る構成です。歌わないパートは相手の言葉と次の入りを心の中で歌います。
六つのフラットへ変わります。新しい和音→各パートの開始音→「越えてゆけ」のまとまり→前から接続、の順で練習します。
長い「ah」はパート内で三組に分けても構いません。高音を押さず、響きを息でつなぎます。
ユニゾンから二声に分かれる切り替わりは濁りやすい場所です。分かれる前後だけを取り出して、音程をていねいに確認します。(雑誌「教育音楽」より)
何度も登場する大切な言葉です。「こ」の前に小さな「っ」を入れるつもりで歌うと、子音がすっと立ちます。(雑誌「教育音楽」より)
「越えてゆけ」は、歌詞の意味を味わうことと、音楽の仕組みを聴き取ることを切り離さず、子ども自身が「こう歌いたい」という思いや意図へ結び付けやすい教材です。
「美しい狭間」と「半端な場所」という歌詞の対比、サビの反復、IからIIへの受け渡し、ユニゾンから二部合唱への広がり、最終サビの転調が、曲想の変化を耳で確かめる手がかりになります。感じたことを話し、歌って試し、聴いて選び直す学習を組み立てられます。
歌詞の内容だけでなく、反復、声部の交代、音の重なり、転調、速度の変化を結び付けて聴きます。さらに、呼吸と発音に気を付け、各声部・全体の響き・伴奏を聴いて歌います。
この曲で見取れる姿:「転調したから、最後の『越えてゆけ』が新しい場所へ踏み出すように聞こえた」など、感じた理由を歌詞と音楽の両方で説明できる。
「誰から誰への『越えてゆけ』か」「風は強いか、そっと吹くか」などを考え、音色、強弱、息、フレーズを変えて歌い比べます。違いを聴き、歌詞と曲の特徴にふさわしい表現を選びます。
この曲で見取れる姿:「『心の連れてく場所へ』を遠くへ届けたいので、最後の『へ』まで息をつないだ」のように、表現の意図と方法を結び付けられる。
一度決めた歌い方を正解にせず、録音や別パートの声を手がかりに改善します。自分の考えを伝え、異なる解釈や歌い方のよさを認めながら、合唱全体の表現をつくります。
この曲で見取れる姿:主旋律を生かす音量を仲間と探し、聴き合って見つけたことを次の練習へつなげている。
| 〔共通事項〕の視点 | 楽譜・歌詞にある手がかり | 授業で行うこと | 深まる学び |
|---|---|---|---|
| 音色・強弱 | 同じ「越えてゆけ」が、曲の中で繰り返される。 | 自分への声、友達への声、仲間の声として歌い比べる。 | 同じ旋律でも、届け先と音色で曲想が変わることを確かめる。 |
| リズム・フレーズ | 5〜12小節の16分音符と、言葉が前へ進むまとまり。 | ことば読みから歌へ移し、「け」まで一息で運ぶ。 | リズムと日本語の発音・語感を結び付ける。 |
| 音の重なり 縦と横との関係 | 13小節からI、21小節からII、29小節でユニゾン、33小節から二部へ。 | 歌う側と聴く側を交代し、主旋律と副次的な声の役割を確かめる。 | 各声部の役割が変化し、全体の響きをつくることを理解する。 |
| 反復・変化 | サビが繰り返されながら、声部構成と意味が変わる。 | 最初・中間・最後のサビを録音し、違いと理由を話す。 | 反復が「同じ」ではなく、物語と表現を前へ進める仕組みだと捉える。 |
| 調・和音の響き | 50小節で調号が変わり、最終サビへ進む。 | 転調前後を聴き比べ、景色や気持ちの変化を言葉にする。 | 調や和音の変化と、「新しい場所へ進む」曲想を関わらせる。 |
| 速度・拍 | 58〜61小節のrit.、2/4、a tempo。 | 歌わずに指揮で拍を共有してから、言葉を入れる。 | 速度や拍の変化が、ためらい・決意・前進の感じを生む可能性を試す。 |
歌詞と音楽の変化を結び付け、思いの伝わる合唱表現をつくろう
対象の目安:小学校第5・6学年。声や音域、授業時数、児童の実態に合わせて扱う範囲を調整します。
根拠資料:文部科学省 「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 音楽編」 第3章第3節「第5学年及び第6学年の目標と内容」歌唱、〔共通事項〕、歌唱教材選択の観点。ここに示した題材目標・活動は本曲用の提案例です。各学校の年間指導計画と子どもたちの実態に合わせて調整してください。
この歌を学校で扱ってくださった先生、歌い方や場の工夫など、ほかの先生にもシェアできる資料をお持ちの先生、ぜひご連絡ください。集まり次第、この場所に掲載していきます。
実践・資料を送るボタンでメールが開かないときは、こちらへ:yuge@mbfc.or.jp
この曲集の表題曲になった「越えてゆけ」は、僕が音楽活動を始めてからの十年のあいだ、いちばん多く「楽譜がほしい」と声をかけてもらった歌です。当時はまだ出版していなかったので、そのたびに自宅で楽譜を印刷して、お送りしていました。コンサートで歌うと、終わったあとによく声をかけていただく、僕自身もとても思い入れの深い一曲です。
ただ、この歌はリズムが少し複雑で、音域も広くて、なかなか「決定版」と呼べる形を作れずにいました。たくさんの人に歌ってほしいのに、難しくて手が届かない――そのもどかしさが、ずっと心のどこかにありました。
そこである時、「中学生なら歌えるかもしれない」と一念発起して、音域をしぼり、一番をユニゾンにして、覚えるハモリを減らして、なるべく取り組みやすい形に作り直しました。それが教育音楽の中学版に載り、作品集「HAPPY MUSIC」にも収めてもらえました。やがて「小学校でも歌いたい」という声が届いて、同声の版が生まれました。エンディングは、あっさりと終わる形と、最後にぐっと盛り上がって終わる形の、二種類を用意しています。
歌詞のなかの「晴天と夕焼けのはざま」は、青空と夕焼けが美しいグラデーションをつくる、ほんの一瞬の空のことです。今しかない、時のきらめき。けれど、その美しさのただ中にいる本人は、なかなかそれに気づけないものです。歌は「半端な場所から一歩も動けない」と続きます。そして「遠ざかる雲」は、昨日までの自分のこと。それを見送って、「越えてゆけ」と歌います。
二番は、変わりたい自分と、変わりたくない自分のあいだで揺れる気持ちを歌っています。一歩前に進もうとするたびに、「ああ 懐かしい君がいる」。それでも、その思い出ごと抱きしめて「越えてゆけ」と歌うのです。新しい自分に出会おうとしている人の背中を、この歌がそっと押せたらと願っています。立志式や卒業式など、誰かが一歩を踏み出す場面で歌ってもらえたら、これほどうれしいことはありません。
これまでたくさんの人に歌っていただいてきたこの歌を、ようやくこうして曲集の表題曲としてお届けできることが、僕はとてもうれしいです。今回のCDでは、合唱版(むさし野ジュニア合唱団「風」)と、僕自身が歌った作者オリジナル版を、聴き比べていただけます。
この歌には、弟がいます。立志式の歌として広く歌われている「次の空へ」です。どちらも、新しい自分に出会うために決意をする人の、背中を押す歌です。
このページの歌詞の解説・指導のコツ・難所マップ・指導要領のポイントを、そのままA4にまとめて印刷できます。
印刷用ページを開く(A4)