第二章 ── ワクワク!音楽会のうた
No.06

Steamship ~夢の蒸汽船~

作詞・作曲:弓削田健介
楽譜集 本文p.40

幕末の名もない技術者への憧れと、同世代の仲間との出会いから。

Listenきいてみる
旅ワンくん
「Steamship ~夢の蒸汽船~」は、幕末の名もない技術者への憧れと、同世代の仲間との出会いから。 言葉と音の変化を聴いてみるワン!── 旅ワンくん

演奏:神戸少年少女合唱団(指導:小畑マユミ)

Lyrics歌詞
1番

夢の空 旅をする Steamship
Enjoy the present
晴れ渡る朝も 嵐の夜も
一番寂しかったとき 笑顔をくれた君が
探し物に続く航路 心に続いていること 教えてくれた

2番

憧れに 旅をする Steamship
Believe in tomorrow
ふりつづく雨も 虹にかわるよ
一番嬉しかったとき 一緒に泣いてくれた
宝物に出会う地図は 心に隠れていること 教えてくれた

共通部

双眼鏡 はんぶんこして
おんなじ景色 分け合って
何よりも大事なもの 探しに行こう
冒険をはじめよう
風が行く手 阻んでも
この胸に湧き上がる 情熱を燃やせ

2番の変化

双眼鏡 はんぶんこして
でっかい夢を 分け合って
何よりも大事なもの 解き放つんだ
冒険は終わらない
風が行く手 阻んでも
この胸に湧き上がる 情熱を燃やせ

結び

ラララ…
忘れないで 夢見ること
あの頃のように まっすぐに
Steamship 碇をあげろ
Steamship 帆をゆらせ
Steamship 心ふるわせ
Depart for dream

FOR TEACHERS & CHILDREN

先生と子どもたちのための資料集

Overview曲の概要
おすすめの場面学年合唱、節目の集会、仲間との出発を扱う音楽会
対象の目安小学校中学年以上。転調と反復後の行き先を整理できれば初めての二部合唱にも扱える
テンポ・拍子♩=138、4分の4拍子
音域全声部総合C4〜F5。中央のドC4から、その1オクターブ上のファまで(譜面目視による暫定実測)
演奏時間約2分50秒。素材記載値であり、完成音源による実測は要本人確認
Materials楽譜・音源
山田聡先生
楽譜には、歌い方のヒントがぎっしり書き込まれています。音源と両方そろうと、練習の道しるべになりますよ。── 山田聡先生
楽譜・CD
作品集「越えてゆけ」表紙
楽譜/参考演奏CDはこちら

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Words to Expression歌詞の解説
ボス先生(中学校国語の先生)
言葉の意味は、一つに決めなくていいんです。「こうも読める」が見つかるたび、歌い方も増えていく。詩を読むのと、同じですね。── ボス先生
作者の説明で確認できること歌詞から広がる言葉の可能性
歌詞全体から読める一つの可能性

夢を一人で燃やし続ける歌ではなく、違う力を持つ人とつながり、同じ景色を分け合いながら航路をつくる歌。

出航の勇ましさだけを前に出すと、曲の中心にある「はんぶんこ」の小さな動作が隠れる。大きな船の比喩と、一つの双眼鏡を分ける身近な関係が同時にあるところに、この歌の広がりがある。

気になる言葉を選んで、開いてみてください。

Steamship
読みの手がかり自力で進む蒸汽船は、願いを現実の動きへ変える器とも、仲間の力が集まる場とも読める。
歌い比べ子音を鋭くそろえて機関の動きを出す/母音を長く保ち、大きな船体を感じさせる。
読みの手がかり職業や目標だけでなく、まだ名前のない願い、守りたい関係、知りたいことも含められる。
歌い比べ先を見て明るく歌う/胸の内を確かめるように柔らかく歌う。
蒸汽船
読みの手がかり大きな力だけでなく、熱、機関、操舵、整備など多くの役割が組み合わさって進む乗り物である。
歌い比べ拍の芯を強く出す/8分音符を滑らかにつなぎ、止まらない進行を作る。
情熱作者の説明
読みの手がかり完成稿・素材では、異なる分野で志を持つ仲間との出会いが制作の背景として語られる。感情の大きさだけでなく、続けてきた営みへ目を向けられる。
歌い比べ音量を上げて外へ放つ/響きを保ち、内側で長く燃える熱として歌う。
航路
読みの手がかりあらかじめ一本に決まった道ではなく、天候や出会いに応じて選び直す道筋と読める。
歌い比べフレーズの行き先を一直線に示す/小さな和声変化ごとに進路を確かめる。
仲間作者の説明
読みの手がかり資料では、違うフィールドで強い志を持つ人との出会いが歌の像を結んだと説明される。「同じ」より「違う力を持ち寄る」に重心を置ける。
歌い比べ全員で同じ音色をそろえる/声部ごとの音色を少し残して重ねる。
双眼鏡作者の説明
読みの手がかり資料で「つながり」を示す中心的な言葉として挙げられる。遠くを見る道具が、隣の人との近い動作を生む。
歌い比べ遠方へ焦点を合わせるように細く響かせる/隣へ手渡すように語りかける。
はんぶんこ作者の説明
読みの手がかり所有するのでなく分け合う動作が、仲間との関係を具体化する。
歌い比べ弾む言葉として軽く歌う/一音ずつ大切に置き、手渡す温度を出す。
おんなじ景色
読みの手がかり同じ物を見ても感じ方まで一致するとは限らない。視線を共有しながら、受け取り方の違いを残せる。
歌い比べ声部を溶かして一つの景色にする/上下の旋律を聞こえ分け、複数の見方を残す。
分け合って作者の説明
読みの手がかり完成稿・素材に示された「つながり」の核を、動詞として表す。物だけでなく時間、視界、役割を分ける読みもできる。
歌い比べ語尾へ向けて広げる/相手へ静かに渡すように弱めず保つ。
AI Picture Story学校での取り組み例

AIと対話しながら、
歌詞から生まれた物語を一枚の絵に

こなっしー先生(小梨貴弘先生)
AIはたくさんの案を出してくれます。でも「これだ」と選ぶのは、歌を聴いた自分の心。友だちと絵がちがうほど、面白いんです。── こなっしー先生
この場所には、これから「Steamship ~夢の蒸汽船~」の一枚絵が並びます。
学校では、こんな形で取り組めます
INDIVIDUAL

一人ひとりの物語をつくる

心に残った歌詞を選び、自分が思い浮かべた主人公、風景、色をAIとの対話で一枚絵にします。絵の違いが、そのまま歌の受け取り方の違いになります。

GROUP

グループで場面を持ち寄る

歌詞を意味のまとまりに分け、一人一場面ずつ案を出します。なぜその構図や表情にしたのかを話し合い、一枚の絵物語へまとめます。

CLASS

クラスに一枚を残す

学級で大切にしたい言葉を出し合い、先生が対話をまとめます。そのクラスだけの歌の受け取り方を教室に残せます。

進め方の一例

聴いて、言葉を選ぶ

歌を聴き、心が動いた歌詞と、その理由を短く書きます。

場面を言葉にする

誰が、どこで、どんな表情をしているか。浮かんだ色や光もAIへ伝えます。

案を比べ、話し合う

画像を作る前に場面案を読み、歌詞に合っているかを確かめます。

作って、直して、語る

絵を見て対話を続け、最後に「なぜこの絵にしたか」を自分の言葉で伝えます。

ChatGPTへの最初の指示例

合唱曲「Steamship ~夢の蒸汽船~」を聴いて、心に残った歌詞と、浮かんだ場面をまとめました。この曲を五〜八場面の一枚絵にする案を考えてください。各場面について「歌詞の意味」「絵にする瞬間」「人物の表情」「色と光」を提案し、画像を作る前に私へ確認してください。私の解釈を大切にし、違う考えを勝手に決めつけないでください。
大切にしたいこと:AIの提案を正解にせず、歌を聴いた自分の感じ方を中心にします。画像内の歌詞は、最後に入稿譜と一文字ずつ照合します。学校や自治体の生成AI利用ルールに沿って行ってください。
Teaching Tips指導のコツ
ともちゃん先生
ぜんぶ一度にやらなくて大丈夫。クラスに合いそうなものを、今日はひとつだけ試してみてください。── ともちゃん先生

1〜7・前奏から歌い出し:♩=138の推進へ乗り、休符の後にそろえて入る

伴奏の拍を歩く → 7小節の直前だけ聞く → 最初の子音を無声音で合わせる → 音程を付ける

14〜15・変ホ長調への転調:調号が一度にフラット3個へ変わり、開始音の感覚が変わる

15小節の和音を聞く → 各声部の開始音を単音で取る → 14〜16小節をハミング → 言葉を戻す

23〜24・ハ長調への帰還:調号が外れ、直前の響きを引きずりやすい

24小節だけ主和音で確認 → 23小節末から無母音で接続 → 母音 → 歌詞

27〜35・二部の独立:上下が異なる動きをし、相手へつられやすい

リズム読み → 各声部を単独 → 片方を歌い片方は拍打ち → 小音量で重ねる → 通常の響きへ

Curriculum指導要領に沿ったポイント
フルティ先生(古川敏子先生)
指導要領って堅そうに見えるでしょ?でも、そこさえ押さえておけば、あとは自由なのよ。根拠を持って歌えることが、子どもの自信になるの。── フルティ先生

この曲で見取れる姿を、音楽の仕組みと歌詞の内容から整理します。

知識・技能

三つの調、反復括弧、ユニゾンと二部、8分音符の推進 調の変化後も開始音と拍を保ち、声部の役割を理解して歌える

思考・判断・表現

表現記号が少ない譜面、船・双眼鏡・共有の言葉 音色、強弱、語尾、声部の混ぜ方を複数試し、言葉との関係から選べる

共通事項6視点──手がかり・行うこと・深まる学び
視点曲にある手がかり歌いながら行うこと深まる学び
音色・強弱細かな指定の少なさ、三つの調同じ句を軽い音色と厚い音色で歌い比べる音量だけでなく音色で情熱や共有を表せる
リズム・フレーズ♩=138、8分音符、長い言葉拍上のことば読みから息のまとまりを作る推進と語意の両方を保てる
音の重なりユニゾンから二部への変化一声、交互、二声の順で重ねる違う旋律が同じ方向を作る仕組みが分かる
反復・変化7小節の反復、二つの括弧1回目と2回目の歌詞・音色を比べる同じ音楽が言葉によって別の場面になると気づく
調・和音C→E♭→C→A♭各転調の最初の和音を聞き比べる調の色が構成と物語の転換を作ると捉えられる
題材名・目標例

題材名の例

「Steamship ~夢の蒸汽船~」の言葉と音の変化を聴き合い、歌い方をつくろう

対象の目安:小学校中学年以上。転調と反復後の行き先を整理できれば初めての二部合唱にも扱える

目標例

  • 三つの調、反復括弧、ユニゾンと二部、8分音符の推進 調の変化後も開始音と拍を保ち、声部の役割を理解して歌える
  • 表現記号が少ない譜面、船・双眼鏡・共有の言葉 音色、強弱、語尾、声部の混ぜ方を複数試し、言葉との関係から選べる
テーマへの配慮:夢、情熱、出航という言葉は、将来像がまだ分からない子、動き出す力が出ない子、集団へ加わることに不安がある子には負担になりうる。「夢を言う」「熱く歌う」「全員と同じ景色を見る」を参加条件にせず、船の音を聞く、反復を示す、伴奏の拍を感じるなど複数の関わり方を認める。 幕末や技術史を背景として紹介する場合も、特定の政治的立場や人物像を歌の正解にしない。名前の残る人物だけでなく多くの役割が船を動かしたという資料上の視点を手がかりにし、歴史の詳しい説明は別途確かな資料で確認する。

根拠資料:文部科学省 「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 音楽編」。ここに示した内容は、Steamship ~夢の蒸汽船~の楽譜と歌詞から考えられる提案例です。学校や子どもたちの実態に合わせて調整してください。

Difficulty Mapこの曲の難所マップ
大志くん
つまずく場所は、だいたいみんな同じなんです。先にわかっていれば、怖くない。ひとつずつ越えていきましょう!── 大志くん
楽譜上の難所
練習順
1〜7・前奏から歌い出し
楽譜上の難所♩=138の推進へ乗り、休符の後にそろえて入る
練習順伴奏の拍を歩く → 7小節の直前だけ聞く → 最初の子音を無声音で合わせる → 音程を付ける
14〜15・変ホ長調への転調
楽譜上の難所調号が一度にフラット3個へ変わり、開始音の感覚が変わる
練習順15小節の和音を聞く → 各声部の開始音を単音で取る → 14〜16小節をハミング → 言葉を戻す
23〜24・ハ長調への帰還
楽譜上の難所調号が外れ、直前の響きを引きずりやすい
練習順24小節だけ主和音で確認 → 23小節末から無母音で接続 → 母音 → 歌詞
27〜35・二部の独立
楽譜上の難所上下が異なる動きをし、相手へつられやすい
練習順リズム読み → 各声部を単独 → 片方を歌い片方は拍打ち → 小音量で重ねる → 通常の響きへ
36〜43・双眼鏡から共有語
楽譜上の難所言葉が細かく、子音で拍が遅れやすい
練習順歌詞を拍内で読む → 母音だけでレガート → 子音を短く戻す → 2声を重ねる
43〜46・括弧と最終転調
楽譜上の難所1回目と2回目で進路が違い、2回目は変イ長調へ入る
練習順矢印で経路確認 → 43→44→7を演奏 → 43→45→46を演奏 → 連続で両経路を試す
Teachers' Practice先輩先生の実践
天野朝代先生
先生方の小さな工夫が、となりの学校の宝物になります。この歌の実践、ぜひ聞かせてください。── 天野朝代先生
この場所には、これから先輩先生方の実践(歌い方・場の工夫・子どもたちの姿)が並びます。

実践者募集

この歌を学校で扱ってくださった先生、ほかの先生にもシェアできる工夫をお持ちの先生、ぜひご連絡ください。集まり次第、この場所に掲載していきます。

実践・資料を送る

ボタンでメールが開かないときは、こちらへ:yuge@mbfc.or.jp

Story作者の言葉
ゆげちゃんと旅ワンくん
この歌が生まれるまでのこと、すこしだけ話させてください。── ゆげちゃん

僕は昔から、幕末を生きた人たちの物語が好きでした。

坂本竜馬は桂浜から海の彼方に夢を描き、吉田松陰は松下村塾で若者たちを育てました。西郷隆盛、大隈重信、勝海舟。そして、黒船が来てからたった一年で蒸気船を造り上げてしまった、名もない技術者たち。携帯もインターネットもなく、新幹線も飛行機もなく、自分の藩を出ただけで罪に問われた時代に、命がけで日本を変えようとした若者たちです。そんな人たちの姿が、昔からずっと心に残っていました。

長いあいだ、その想いを胸の奥に溜めてきました。けれど、ある日それがひとつの形になります。きっかけは、自分とはまったく違う仕事をしながら、同じように素晴らしい志を持って生きている、同世代の仲間たちとの出会いでした。ジャンルも場所も違うのに、向いている方向が同じだと感じた瞬間に、長く温めてきたイメージがふっと結ばれて、この歌が生まれたのです。

違う場所にいても、違う仕事をしていても、人はつながっている。たとえ言葉を交わさなくても、同じ夢を見て前へ進もうとする想いは、ちゃんとつながっている。この曲の核にあるのは、その「つながり」です。

日本中を駆け回り、すれ違いながら、それぞれの場所で力を尽くした幕末の人たちも、きっとそうだったんじゃないかな、と想像します。今も、きっと同じなんじゃないかな。スタイルの違う作曲家も、詩人も、出版社の方も、先生たちも、子どもたちも。違う場所で、それぞれの仕事をしながら、どこかでつながっている——そんなふうに思えたら、なんだか心強い気がするのです。

歌詞には「双眼鏡 はんぶんこして」「おんなじ景色 分け合って」という一節があります。一つの双眼鏡をふたりで覗き込んで、同じ景色を分かち合う——僕が「つながり」という言葉に込めたかったものが、ここにいちばん素直に表れている気がします。何よりも大事なものを探しに、いっしょに冒険へ出かけよう。風が行く手を阻んでも、この胸に湧き上がる情熱を燃やそう。そんな呼びかけを、♩=138の元気で速いテンポに乗せました。

この曲には、あえて細かな表現記号や、僕からの注文を付けていません。先生が蒸気船の船長さんになって、それぞれの場所でオリジナルの、熱いSteamshipを歌ってもらえたら嬉しいです。碇をあげて、帆をゆらせて、心をふるわせて。それぞれの夢に向かって、出航してください。

この曲集2026では、神戸少年少女合唱団のみなさんが歌ってくれました。子どもたちの声が重なって、帆がふくらんでいくようでした。歌ってくれて、ありがとう。

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Credit収録
詞・曲
作詞・作曲:弓削田健介
第二章 ワクワク!音楽会のうた
録音
神戸少年少女合唱団(指導:小畑マユミ)