第三章 ── いのち・しあわせ・あたたかさ
No.08

しあわせのかたち

作詞:岩井智宏/作曲:弓削田健介
楽譜集 本文p.52

幸せは、なにげない「ふつう」の中に。「学校に来てくれてありがとう」のまなざし。

Listenきいてみる
旅ワンくん
「しあわせのかたち」は、幸せは、なにげない「ふつう」の中に。「学校に来てくれてありがとう」のまなざし。 言葉と音の変化を聴いてみるワン!── 旅ワンくん

演奏:桐蔭学園小学校合唱部(指導:岩井智宏)

Lyrics歌詞
1回目

しあわせって なんだろう
ひとりずつ かたちのちがう しあわせ
ふしあわせが しあわせに
かわったり しあわせは すぐ きえたり
まいにちを ぜんりょくで
いきている きみだから
たくさんのきもち(えがおも なみだも)
そのすべてを しあわせと よぼう

2回目

ささやかな しあわせに きづけない ときも ある
「ふつう」に かくれてる(あなたの えがおを)
なにげなさを しあわせと よぼう

1回目のサビ

しあわせに なるために いっぱい わらってみよう
かがやく このいっしゅん いっぱい あそぼう
しあわせに なるために

2回目のサビ

しあわせに なるために いっぱい チャレンジしよう
かがやく このいっしゅん いっぱい うたおう

結び

さあ いっしょに
しあわせに なるために いっぱい わらってみよう
かがやく このいっしゅん いっぱい あそぼう
みんなで しあわせに なるために

FOR TEACHERS & CHILDREN

先生と子どもたちのための資料集

Overview曲の概要
おすすめの場面学級・学年の節目、集会、日常の中にある幸せを言葉と音で考えたい場面
対象の目安同声二部へ入り始める小学校中学年以上。低いB3と二声の役割交代に配慮する
テンポ・拍子♩=84、Swing、4分の4拍子
音域全声部総合B3〜E5。中央のドC4の半音下から、中央のドより1オクターブと長3度上まで
演奏時間約2分30秒〜2分40秒。素材シートの収録曲リスト値は2分34秒。実音源で要確認
Materials楽譜・音源
山田聡先生
楽譜には、歌い方のヒントがぎっしり書き込まれています。音源と両方そろうと、練習の道しるべになりますよ。── 山田聡先生
楽譜・CD
作品集「越えてゆけ」表紙
楽譜/参考演奏CDはこちら

作品集「越えてゆけ」

Amazonで見る
音源・動画

各パートの練習用音源は準備中です。

小中学校の先生限定

振付動画・解説動画・練習音源をお届けします

授業ですぐ使える資料を、LINEで無料配布しています。学年やクラスに合わせて、必要なものだけ受け取ってください。

振付動画解説動画パート練習音源カラオケ音源
LINEで受け取る(無料)
LINE公式アカウント「世界を旅する音楽室」友だち追加QRコード スマホでこのQRから
友だち追加

「世界を旅する音楽室」公式アカウント @cnl6351r

Words to Expression歌詞の解説
ボス先生(中学校国語の先生)
言葉の意味は、一つに決めなくていいんです。「こうも読める」が見つかるたび、歌い方も増えていく。詩を読むのと、同じですね。── ボス先生
作者の説明で確認できること歌詞から広がる言葉の可能性
歌詞全体から読める一つの可能性

幸せを一つの形へ決める歌ではなく、移ろう感情となにげない日常を抱えた一人ひとりが、違うまま一緒に歌う可能性を開く歌。

笑顔、涙、ふつう、チャレンジ、遊び、歌を同じ歌の中へ置くことで、幸せを単純な明るさから解放している。ただし、すべてを幸せと呼び直すことを子どもへ強制しない。

気になる言葉を選んで、開いてみてください。

しあわせって なんだろう作者の説明
読みの手がかり疑問形のため、答えを一つに決めずに歌える
歌い比べ誰かへ尋ねる声/自分の内側で考える声/みんなへ開く声を試す
ひとりずつ かたちのちがう しあわせ作者の説明
読みの手がかり同じ場にいても、感じ方や必要な支えは異なってよい
歌い比べひとりずつを丁寧に置く歌い方/しあわせへ向けて流す歌い方を試す
ふしあわせが しあわせに
読みの手がかり出来事が変わるだけでなく、時間や関係によって受け止め方が変わることも含められる
歌い比べ前半を重く後半を軽くする/色を急に変えず一続きにする歌い方を試す
えがおも なみだも作者の説明
読みの手がかり涙をすぐ笑顔へ変えるのではなく、複数の感情が同時にあることを認める
歌い比べ二語を同じ音色で歌う/なみだもだけ少し柔らかくする歌い方を試す
しあわせと よぼう
読みの手がかり断定ではなく、いま新しく名付けてみようという呼びかけにも読める
歌い比べ決意の声/相手へそっと提案する声/自分に言い聞かせる声を試す
「ふつう」に かくれてる作者の説明
読みの手がかりふつうは全員に共通の生活ではなく、その人にとって繰り返される日常と考えられる
歌い比べふつうを際立たせる/前後へ溶かして目立たせない歌い方を試す
なにげなさ作者の説明
読みの手がかり大きな成果ではなく、気付かず通り過ぎるような小さな出来事へ向く言葉
歌い比べ息を多く柔らかく歌う/言葉の輪郭をはっきり届ける歌い方を試す
いっぱい
読みの手がかり量の競争ではなく、行動へ向かう勢いや子どもの話し言葉の近さとして捉えられる
歌い比べ弾む短い子音/大きな拍の中で滑らかに運ぶ歌い方を試す
チャレンジしよう
読みの手がかり成功することだけでなく、試す、助けを求める、休んで再開することも含められる
歌い比べ前へ押す声/仲間を待つ声/不安を含んだ声を試す
みんなで作者の説明
読みの手がかり全員が同じ表情・声量になることではなく、違う声が一つの響きを作ること
歌い比べ全員で同じ音量/声部ごとに音色を変え、最後に重ねる歌い方を試す
AI Picture Story学校での取り組み例

AIと対話しながら、
歌詞から生まれた物語を一枚の絵に

こなっしー先生(小梨貴弘先生)
AIはたくさんの案を出してくれます。でも「これだ」と選ぶのは、歌を聴いた自分の心。友だちと絵がちがうほど、面白いんです。── こなっしー先生
この場所には、これから「しあわせのかたち」の一枚絵が並びます。
学校では、こんな形で取り組めます
INDIVIDUAL

一人ひとりの物語をつくる

心に残った歌詞を選び、自分が思い浮かべた主人公、風景、色をAIとの対話で一枚絵にします。絵の違いが、そのまま歌の受け取り方の違いになります。

GROUP

グループで場面を持ち寄る

歌詞を意味のまとまりに分け、一人一場面ずつ案を出します。なぜその構図や表情にしたのかを話し合い、一枚の絵物語へまとめます。

CLASS

クラスに一枚を残す

学級で大切にしたい言葉を出し合い、先生が対話をまとめます。そのクラスだけの歌の受け取り方を教室に残せます。

進め方の一例

聴いて、言葉を選ぶ

歌を聴き、心が動いた歌詞と、その理由を短く書きます。

場面を言葉にする

誰が、どこで、どんな表情をしているか。浮かんだ色や光もAIへ伝えます。

案を比べ、話し合う

画像を作る前に場面案を読み、歌詞に合っているかを確かめます。

作って、直して、語る

絵を見て対話を続け、最後に「なぜこの絵にしたか」を自分の言葉で伝えます。

ChatGPTへの最初の指示例

合唱曲「しあわせのかたち」を聴いて、心に残った歌詞と、浮かんだ場面をまとめました。この曲を五〜八場面の一枚絵にする案を考えてください。各場面について「歌詞の意味」「絵にする瞬間」「人物の表情」「色と光」を提案し、画像を作る前に私へ確認してください。私の解釈を大切にし、違う考えを勝手に決めつけないでください。
大切にしたいこと:AIの提案を正解にせず、歌を聴いた自分の感じ方を中心にします。画像内の歌詞は、最後に入稿譜と一文字ずつ照合します。学校や自治体の生成AI利用ルールに沿って行ってください。
Teaching Tips指導のコツ
ともちゃん先生
ぜんぶ一度にやらなくて大丈夫。クラスに合いそうなものを、今日はひとつだけ試してみてください。── ともちゃん先生

5〜12小節:問いを急がない

ことば読み → Swingを加える → 音程を付ける。なんだろうの語尾を切り過ぎない。

17〜20小節:別の言葉を同時に届ける

Iだけ → IIだけ → 語尾だけ合わせる → 全体を重ねる。

20〜21小節:転調後の開始音を先に取る

F-A-Cを聴く → 各声部の最初の音 → 19〜22小節。

21〜28小節:paを伴奏のように歌う

子音を軽く → 母音の音量を下げる → 主旋律の言葉を聴く。

29〜33小節:道順を歌う前に覚える

記号を色分け → 指さし → ピアノだけ → 歌を入れる。

Curriculum指導要領に沿ったポイント
フルティ先生(古川敏子先生)
指導要領って堅そうに見えるでしょ?でも、そこさえ押さえておけば、あとは自由なのよ。根拠を持って歌えることが、子どもの自信になるの。── フルティ先生

この曲で見取れる姿を、音楽の仕組みと歌詞の内容から整理します。

知識・技能

Swingの拍、ニ長調からヘ長調への転調、I・IIの役割、反復記号を理解し、言葉と二声を保って歌う

思考・判断・表現

幸せ、涙、ふつう、共同という歌詞と、音色・強弱・転調・声部配置を結び付け、複数の歌い方を選ぶ

共通事項6視点──手がかり・行うこと・深まる学び
視点曲にある手がかり歌いながら行うこと深まる学び
音色・強弱強弱記号が少なく、歌詞と役割で表情を作る問い、涙、pa、みんなでを複数の音色で歌い比べる記号が少なくても音色と相対的な強弱で曲想を作れる
リズム・フレーズ♩=84のSwing、細かな日本語普通の8分音符とSwingを比べ、意味のまとまりに呼吸線を入れる拍の弾みと日本語のまとまりの関係が分かる
音の重なり17〜20小節の別歌詞、Cのpaと主旋律片方を歌い、片方を聴く役割を交替する主旋律だけでなく、相手声部が意味と拍を支えることに気付く
反復・変化Bの反復、歌詞差、D.S.とCoda1回目・2回目・D.S.後の同じ部分を聴き比べる同じ音楽でも言葉と演奏順で役割が変わる
調・和音20〜21小節のニ長調からヘ長調、借用和音転調前後の開始和音を聴き、同じ歌詞を歌い比べる調と和音の色が言葉の受け止め方を変える
題材名・目標例

題材名の例

「しあわせのかたち」の言葉と音の変化を聴き合い、歌い方をつくろう

対象の目安:同声二部へ入り始める小学校中学年以上。低いB3と二声の役割交代に配慮する

目標例

  • Swingの拍、ニ長調からヘ長調への転調、I・IIの役割、反復記号を理解し、言葉と二声を保って歌う
  • 幸せ、涙、ふつう、共同という歌詞と、音色・強弱・転調・声部配置を結び付け、複数の歌い方を選ぶ
テーマへの配慮:幸せ、笑顔、涙、学校へ来ることは、子どもの家庭状況、登校経験、喪失、病気、心身の状態に触れうる。完成稿にある「学校に来てくれてありがとう」のエピソードを紹介する場合も、登校できたことだけを価値にせず、来られない日や別の学び方を選ぶ日も同じように尊重する。自分の不幸や涙を話すことを求めない。 いっぱい わらってみよう、いっぱい チャレンジしようは、笑顔や挑戦を参加条件にしない。歌わずに聴く、paだけを担当する、手拍子や視覚合図を担う、休むという選択も含める。幸せと呼びたくない経験を、歌の都合で肯定へ変えない。

根拠資料:文部科学省 「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 音楽編」。ここに示した内容は、しあわせのかたちの楽譜と歌詞から考えられる提案例です。学校や子どもたちの実態に合わせて調整してください。

Difficulty Mapこの曲の難所マップ
大志くん
つまずく場所は、だいたいみんな同じなんです。先にわかっていれば、怖くない。ひとつずつ越えていきましょう!── 大志くん
楽譜上の難所
練習順
5〜12小節・A
楽譜上の難所B3を含む低い旋律に、細かな日本語が入る
練習順ことばを一つの高さで読む → Swingの長短を手拍子で加える → B3付近を軽い声で確認 → 旋律へ戻す
13〜16小節・B前半
楽譜上の難所1回目と2回目で歌詞が替わり、同じ音型の語数が違う
練習順1回目だけ読む → 2回目だけ読む → 母音の着地点へ印を付ける → 伴奏なしで交互に歌う
17〜20小節・二声
楽譜上の難所IとIIが別の言葉・別のリズムを同時に歌う
練習順各声部を単独で整える → 相手声部を聴きながら話す → 語尾だけ一緒に合わせる → 全音程で重ねる
20〜21小節・転調
楽譜上の難所調号がシャープ2個からフラット1個へ変わり、開始音と音色が変わる
練習順20小節の終音を取る → F-A-Cを聴く → 21小節の各開始音だけ歌う → 19〜22小節を往復する
21〜28小節・C
楽譜上の難所paの反復と歌詞が重なり、子音が強いと主旋律を覆う
練習順paを弱い母音で置く → 主旋律だけ歌う → 役割を交替して聴く → 二声の音量を決める
29〜33小節・括弧と記号
楽譜上の難所反復、1・2番括弧、D.S.、To Coda、Codaが短い範囲に集中する
練習順記号を色分け → 無言で指さして道順をたどる → ピアノだけで移動 → 歌詞を付けて通す
Teachers' Practice先輩先生の実践
天野朝代先生
先生方の小さな工夫が、となりの学校の宝物になります。この歌の実践、ぜひ聞かせてください。── 天野朝代先生
この場所には、これから先輩先生方の実践(歌い方・場の工夫・子どもたちの姿)が並びます。

実践者募集

この歌を学校で扱ってくださった先生、ほかの先生にもシェアできる工夫をお持ちの先生、ぜひご連絡ください。集まり次第、この場所に掲載していきます。

実践・資料を送る

ボタンでメールが開かないときは、こちらへ:yuge@mbfc.or.jp

Story作者の言葉
ゆげちゃんと旅ワンくん
この歌が生まれるまでのこと、すこしだけ話させてください。── ゆげちゃん

この曲「しあわせのかたち」は、音楽教育者の岩井智宏先生と一緒に作りました。岩井先生が詞を書いてくださり、その言葉に僕がメロディをつけた一曲です。もともとはオンラインでだけお届けしていた歌なので、今回のCD収録が初めてのお披露目になります。

岩井先生のことを、みんなは親しみを込めて「トモちゃん」と呼びます。太陽みたいに明るくて、誰にでもすっと懐に入ってくる人。そして、先生は誰に対しても壁を作りません。子どもにも、大人にも、はじめましての相手にも。目の前のその人の存在を、まるごと肯定してしまう。そんな先生のそばにいると、いつもこちらが励まされます。

こんな話を聞いたことがあります。長いあいだ学校に来られなかった子が、ある日ぽつんと教室に現れたとき、岩井先生はその子に「学校に来てくれてありがとう」と声をかけたそうです。がんばって来たね、でもなく、待ってたよ、でもなく、ただ「来てくれてありがとう」。来たことそのものを、まっすぐに喜ぶ。そこに先生のすべてが表れている気がして、僕はこの話が忘れられません。

「しあわせのかたち」という詞には、その岩井先生のまなざしがそのまま流れています。

「しあわせって なんだろう」。歌は、そんな問いかけから始まります。幸せのかたちは、ひとりずつ違う。さっきまでの不幸せがふっと幸せに変わったり、つかんだと思った幸せがすぐに消えてしまったり。幸せって、本当はとてもうつろいやすくて、つかみどころのないものです。

それでも詞は、こう歌います。毎日を全力で生きている君だから、笑顔も涙も、そのすべてを「しあわせ」と呼ぼう、と。そして、ささやかな幸せに気づけない日もあるけれど、幸せは「ふつう」の中に、なにげない毎日の中にちゃんと隠れているんだよ、と。

これは、岩井先生が子どもたち一人ひとりを見つめるまなざしと、まったく同じだと思うのです。幸せは、どこか遠くにある特別なものじゃない。今ここにいる君の中に、君の毎日の中に、もうちゃんとある。「学校に来てくれてありがとう」と、来たことそのものを喜ぶように、詞は一人ひとりの存在をやさしく肯定します。

そして最後は、「いっぱい わらってみよう」「いっぱい うたおう」と背中を押しながら、「みんなで しあわせに なるために」と、手をつなぐように広がっていきます。一人ひとりの中にある幸せが、寄り集まって、みんなの幸せになっていく。

毎日を全力で生きている子どもたちと、その子たちを見守るすべての方に、この歌が届きますように。そして、あなたのなにげない毎日の中にも幸せがちゃんとあることに、ふっと気づいてもらえたら嬉しいです。

Print授業資料(印刷)
Credit収録
詞・曲
作詞:岩井智宏/作曲:弓削田健介
第三章 いのち・しあわせ・あたたかさ
録音
桐蔭学園小学校合唱部(指導:岩井智宏)