第六章 ── 卒業式・旅立ちのうた
No.15

つばさにかえて

作詞・作曲:弓削田健介
楽譜集 本文p.81

もらった「ありがとう」が翼になって、未来へ飛び立つ。全編ひらがなの卒業のうた。

Listenきいてみる
旅ワンくん
「つばさにかえて」は、もらった「ありがとう」が翼になって、未来へ飛び立つ。全編ひらがなの卒業のうた。 言葉と音の変化を聴いてみるワン!── 旅ワンくん

演奏:八千代少年少女合唱団(指導:長岡利香子・長岡亜里奈)

Lyrics歌詞
導入

きみがいてくれたから
なんどでもたちあがれた
きみがいてくれたから
なんどでもはしりだせた

1番

ああ きせつはめぐって
もうたびだちのとき
さようなら ともだち
さようなら おもいで
はるかなみらいへと ぼくらはたびだつ
たくさんの「ありがとう」
つばさにかえて

2番

さくらいろのかぜに
くるまれて ゆこうか
さようなら きょうしつ
さようなら せんせい
ひとりじゃないことを
このばしょでしった

結び

さようなら ともだち
さようなら おもいで
かがやくみらいへと ぼくらはたびだつ
たくさんの「ありがとう」
つばさにかえて

FOR TEACHERS & CHILDREN

先生と子どもたちのための資料集

Overview曲の概要
おすすめの場面卒業式、感謝を伝えたい日。在校生と卒業生が同じ言葉で歌う場面
対象の目安同声二部へ入り始める小学校中学年以上。低いB3、三連符、反復の道順に配慮する
テンポ・拍子♩=82。4分の4拍子を基本に、46小節で4分の2拍子、47小節で4分の4拍子へ戻る
音域全声部総合B3〜C♯5。中央のドC4の半音下から、中央のドより1オクターブと半音上まで
演奏時間約3分10秒〜3分20秒。素材シートの収録曲リスト値は3分08秒。実音源で要確認
Materials楽譜・音源
山田聡先生
楽譜には、歌い方のヒントがぎっしり書き込まれています。音源と両方そろうと、練習の道しるべになりますよ。── 山田聡先生
楽譜・CD
作品集「越えてゆけ」表紙
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Words to Expression歌詞の解説
ボス先生(中学校国語の先生)
言葉の意味は、一つに決めなくていいんです。「こうも読める」が見つかるたび、歌い方も増えていく。詩を読むのと、同じですね。── ボス先生
作者の説明で確認できること歌詞から広がる言葉の可能性
歌詞全体から読める一つの可能性

卒業を何かを失う日だけにせず、受け取った多くの感謝と、ひとりではないと知った記憶を、これから進むための翼へ変える可能性を持つ歌。

別れの対象を友達、思い出、教室、先生と具体的に置きながら、最後はありがとうという目に見えないものをつばさへ変える。感謝を重い義務ではなく、未来へ運ぶ力として描くことができる。

気になる言葉を選んで、開いてみてください。

きみがいてくれたから作者の説明
読みの手がかりきみは一人の友達、複数の人、過去の自分などに開けるが、作者の実在モデルとは断定しない
歌い比べ一人へ近く届ける声/複数の人へ広く届ける声/自分の内側で思い出す声を試す
なんどでも
読みの手がかり失敗の回数を競うのではなく、支えが繰り返し働いた時間を示す
歌い比べ一語ずつ確かめる/次の動詞へ一息で向かう歌い方を試す
たちあがれた/はしりだせた
読みの手がかり実際の身体動作だけでなく、再開する、声を出す、助けを求める変化にも開ける
歌い比べ重さから軽さへ変える/二つの動詞を同じ音色で歌う方法を試す
きせつは めぐって
読みの手がかり時間が進み、同じ場所へ戻りながら卒業へ近づく感覚
歌い比べ円を描くようにつなぐ/拍ごとに季節の進みを示す歌い方を試す
たびだち作者の説明
読みの手がかり遠くへ移動することだけでなく、学年・関係・自分の役割が変わる節目
歌い比べ決意を前へ出す/別れの気持ちを残す/静かに受け止める歌い方を試す
さくらいろの かぜ作者の説明
読みの手がかり風に色があるという比喩で、目に見えない空気へ季節と感情を重ねる
歌い比べ母音を柔らかくつなぐ/言葉の子音を明るく立てる歌い方を試す
さようなら
読みの手がかり関係を消す言葉ではなく、相手や場所を覚えたまま区切りを付ける言葉とも読める
歌い比べ遠くへ届ける/近くで伝える/語尾を残す歌い方を試す
ひとりじゃないことを作者の説明
読みの手がかり常に誰かがそばにいる保証ではなく、支えを受け取った記憶としても読める
歌い比べ二声を同じ音量で重ねる/一方を支えのように弱く置く歌い方を試す
たくさんの「ありがとう」作者の説明
読みの手がかり言うべき礼儀の数ではなく、受け取った支えの記憶が重なること
歌い比べ一つずつ数えるように歌う/一息で広げる/声部ごとに別の相手を思う歌い方を試す
つばさにかえて作者の説明
読みの手がかり実際の翼ではなく、受け取った言葉や関係が前へ進む力へ変わる比喩
歌い比べつばさを広く、かえてを前へ進める/二声の和音を保って静かに伸ばす方法を試す
AI Picture Story学校での取り組み例

AIと対話しながら、
歌詞から生まれた物語を一枚の絵に

こなっしー先生(小梨貴弘先生)
AIはたくさんの案を出してくれます。でも「これだ」と選ぶのは、歌を聴いた自分の心。友だちと絵がちがうほど、面白いんです。── こなっしー先生
この場所には、これから「つばさにかえて」の一枚絵が並びます。
学校では、こんな形で取り組めます
INDIVIDUAL

一人ひとりの物語をつくる

心に残った歌詞を選び、自分が思い浮かべた主人公、風景、色をAIとの対話で一枚絵にします。絵の違いが、そのまま歌の受け取り方の違いになります。

GROUP

グループで場面を持ち寄る

歌詞を意味のまとまりに分け、一人一場面ずつ案を出します。なぜその構図や表情にしたのかを話し合い、一枚の絵物語へまとめます。

CLASS

クラスに一枚を残す

学級で大切にしたい言葉を出し合い、先生が対話をまとめます。そのクラスだけの歌の受け取り方を教室に残せます。

進め方の一例

聴いて、言葉を選ぶ

歌を聴き、心が動いた歌詞と、その理由を短く書きます。

場面を言葉にする

誰が、どこで、どんな表情をしているか。浮かんだ色や光もAIへ伝えます。

案を比べ、話し合う

画像を作る前に場面案を読み、歌詞に合っているかを確かめます。

作って、直して、語る

絵を見て対話を続け、最後に「なぜこの絵にしたか」を自分の言葉で伝えます。

ChatGPTへの最初の指示例

合唱曲「つばさにかえて」を聴いて、心に残った歌詞と、浮かんだ場面をまとめました。この曲を五〜八場面の一枚絵にする案を考えてください。各場面について「歌詞の意味」「絵にする瞬間」「人物の表情」「色と光」を提案し、画像を作る前に私へ確認してください。私の解釈を大切にし、違う考えを勝手に決めつけないでください。
大切にしたいこと:AIの提案を正解にせず、歌を聴いた自分の感じ方を中心にします。画像内の歌詞は、最後に入稿譜と一文字ずつ照合します。学校や自治体の生成AI利用ルールに沿って行ってください。
Teaching Tips指導のコツ
ともちゃん先生
ぜんぶ一度にやらなくて大丈夫。クラスに合いそうなものを、今日はひとつだけ試してみてください。── ともちゃん先生

4〜5小節:弱起の一語を先に合わせる

前奏4拍 → きだけ → きみ → 5小節へ。

13〜16小節:変化音を3音で取る

変化音の前 → 変化音 → 次の音 → 歌詞を戻す。

16〜17小節:分かれる開始音だけ先に取る

unis.終音 → I → II → 二声。

21〜24小節:三連符を大きな拍へ入れる

手拍子 → ことば → 各声部 → 二声。

29〜33小節:戻る道と進む道を分ける

1番括弧 → 2番括弧 → ピアノと接続 → 全曲。

Curriculum指導要領に沿ったポイント
フルティ先生(古川敏子先生)
指導要領って堅そうに見えるでしょ?でも、そこさえ押さえておけば、あとは自由なのよ。根拠を持って歌えることが、子どもの自信になるの。── フルティ先生

この曲で見取れる姿を、音楽の仕組みと歌詞の内容から整理します。

知識・技能

弱起、unis.とdiv.、反復と括弧、三連符、拍子変更、rit.を理解し、二声と伴奏の関係を保って歌う

思考・判断・表現

感謝、別れ、旅立ちという歌詞を、音色・強弱・和音・声部の重なり・はるかな/かがやくの変化と結び付け、複数の歌い方を選ぶ

共通事項6視点──手がかり・行うこと・深まる学び
視点曲にある手がかり歌いながら行うこと深まる学び
音色・強弱強弱記号が少なく、別れと感謝の語が表情を作るさようならとありがとうを複数の音色で歌い比べる言葉と音色の選択で曲想を作れる
リズム・フレーズ弱起、細かな日本語、三連符、長い終音ことば読み、三連符の手拍子、呼吸線を組み合わせる日本語のまとまりと拍の関係が分かる
音の重なりunis.からdiv.、中心リフレインの二声一声ずつ歌い、支える声部を交替して聴く同じ言葉でも重なり方で距離と意味が変わる
反復・変化B・Cの反復、1・2番括弧、終盤の再提示同じ小節の1回目・2回目・終盤を続けて比べる形式が歌詞の時間と視点を整理する
調・和音ニ長調、B7、F、C、D7、G♯m7(♭5)主和音と主調外の和音へ同じ母音を載せる一つの調の中に別れと希望の陰影がある
題材名・目標例

題材名の例

「つばさにかえて」の言葉と音の変化を聴き合い、歌い方をつくろう

対象の目安:同声二部へ入り始める小学校中学年以上。低いB3、三連符、反復の道順に配慮する

目標例

  • 弱起、unis.とdiv.、反復と括弧、三連符、拍子変更、rit.を理解し、二声と伴奏の関係を保って歌う
  • 感謝、別れ、旅立ちという歌詞を、音色・強弱・和音・声部の重なり・はるかな/かがやくの変化と結び付け、複数の歌い方を選ぶ
テーマへの配慮:卒業や学校生活に、友達、先生、教室への肯定的な記憶がない子もいる。さようなら せんせい、ひとりじゃない、ありがとうを、自分の実体験として語ったり書いたりすることを求めない。歌詞の語り手として歌う、特定の相手を思い浮かべず音の役割へ集中する、歌わずに聴く選択も認める。 なんどでも たちあがれたを、努力すれば必ず回復できるという教訓にしない。立ち上がらず休むこと、誰かや制度の支えを受けること、別の道を選ぶこともある。感謝できない経験を、卒業行事の一体感のためにありがとうへ変えない。

根拠資料:文部科学省 「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 音楽編」。ここに示した内容は、つばさにかえての楽譜と歌詞から考えられる提案例です。学校や子どもたちの実態に合わせて調整してください。

Difficulty Mapこの曲の難所マップ
大志くん
つまずく場所は、だいたいみんな同じなんです。先にわかっていれば、怖くない。ひとつずつ越えていきましょう!── 大志くん
楽譜上の難所
練習順
4〜12小節・弱起とA
楽譜上の難所弱起のきから入り、同じ句を細かな日本語で二度歌う
練習順4拍を数える → 弱起だけ入る → ことば読み → 5〜8小節 → 9〜12小節 → 二つをつなぐ
13〜16小節・B
楽譜上の難所反復で歌詞が替わり、B7、F、Cナチュラルを含む
練習順1回目の歌詞 → 2回目の歌詞 → 変化音の前後3音 → 13〜16小節を各番で歌う
17〜20小節・div.
楽譜上の難所unis.から二声へ分かれ、同じさようならから異なる音へ進む
練習順unis.の終音 → Iの開始音 → IIの開始音 → さようならだけ重ねる → 全句へ
21〜24小節・三連符
楽譜上の難所I・IIのリズムが異なり、三連符と低いB3で拍を失いやすい
練習順三連符を手拍子 → IIの低音を軽く確認 → 各声部単独 → 語尾の長さを合わせる
25〜28小節・中心リフレイン
楽譜上の難所I・IIが異なる動きでありがとうとつばさを歌い、子音がぶつかりやすい
練習順母音だけで和音 → 子音の位置を決める → 一声ずつ加える → つばさにかえてを伸ばす
29〜33小節・1・2番括弧
楽譜上の難所1回目は13小節へ戻り、2回目は32小節から終盤へ進む
練習順記号を色分け → 1回目だけ指さす → 2回目だけ指さす → ピアノと32〜33小節を接続
Teachers' Practice先輩先生の実践
天野朝代先生
先生方の小さな工夫が、となりの学校の宝物になります。この歌の実践、ぜひ聞かせてください。── 天野朝代先生
この場所には、これから先輩先生方の実践(歌い方・場の工夫・子どもたちの姿)が並びます。

実践者募集

この歌を学校で扱ってくださった先生、ほかの先生にもシェアできる工夫をお持ちの先生、ぜひご連絡ください。集まり次第、この場所に掲載していきます。

実践・資料を送る

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Story作者の言葉
ゆげちゃんと旅ワンくん
この歌が生まれるまでのこと、すこしだけ話させてください。── ゆげちゃん

「きみがいてくれたから/なんどでもたちあがれた/きみがいてくれたから/なんどでもはしりだせた」。

この曲は、そんな一行から始まります。

卒業の日に胸にこみあげてくるものは、案外、悲しさよりも先に「ありがとう」なのかもしれません。何度ころんでも立ち上がれたのは、走り出せたのは、そばに誰かがいてくれたから。その一人ひとりの顔を思い浮かべながら歌い出せる曲にしたくて、僕はこの出だしを書きました。

歌は、卒業の季節へと進んでいきます。

「さようなら きょうしつ/さようなら せんせい/ひとりじゃないことを/このばしょで しった」。

教室にも、先生にも、お別れの日が来ます。でも、ただ寂しいだけのお別れではありません。この場所で「ひとりじゃない」ことを知った――そのことだけは、これから先もずっと胸の真ん中に残っていってほしい。僕はこの一行を、書きながらいちばん大事にしていました。卒業って、何かを失うことよりも、たくさんのものをもらって出発することなのかもしれない――そんなふうに、僕は思っています。

そして、サビ。

「たくさんの ありがとう/つばさにかえて」。

このタイトルに込めたのは、その一点です。お世話になった人たちからもらった「ありがとう」、子どもたちが心の中で抱える「ありがとう」――そのひとつひとつが、重たい荷物ではなく、空へ運んでくれる翼になってくれたら。うつむくのではなく、顔を上げて飛び立っていけたら――そんな願いをこめました。

「さくらいろのかぜに/くるまれて ゆこうか」。

桜の花びらが舞う、あの旅立ちの季節。その風にやさしく包まれて、「はるかなみらいへ」「かがやくみらいへ」と歩き出していく。1番では「はるかな」、2番では「かがやく」と、ほんの一語だけ未来の色が変わります。遠くまで続いていく道が、少しずつ希望の光を帯びていく――そんな気持ちで歌い分けてもらえたら嬉しいです。

全編、やさしいひらがなで綴りました。低学年の子から口ずさめて、卒業を送り出す在校生も、旅立つ六年生も、同じ言葉で「ありがとう」を歌える。二部のハーモニーがふわりと重なる瞬間に、その「ありがとう」が翼の形になってくれたら――。

この曲集では、八千代少年少女合唱団のみなさんが歌ってくれました。子どもたちの歌声に乗って、たくさんの「ありがとう」が空へ羽ばたいていきますように。卒業式の朝に、感謝を伝えたい日に、歌っていただけたら嬉しいです。

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Credit収録
詞・曲
作詞・作曲:弓削田健介
第六章 卒業式・旅立ちのうた
録音
八千代少年少女合唱団(指導:長岡利香子・長岡亜里奈)