合唱指導室指導者として大切にしていること
フルティ先生
ここは フルティ&ゆげちゃんの合唱指導室。 音楽指導家 古川としこ(フルティ)先生——福岡県・佐賀県の中学校で35年、音楽室から子どもたちを見てきた人の指導術を、 作曲家 弓削田健介(ゆげちゃん)との掛け合いでまとめています。 出典はすべて共著『HAPPY MUSIC』(音楽之友社・第10版)と月刊『教育音楽』の2年間の連載。 はじめての方はトップから
MINDSET / どう在るか

指導者として
大切にしていること

「フルティマジック」と呼ばれる指導。その正体を訊いたら、
こう返ってきました。

「ゆげちゃん。マジックは、毎日は使えないのよ。大事なのはいつもの練習。学校では授業。 私が指導者として大切にしていることを教えましょう」 ── 『HAPPY MUSIC』p48
フルティ先生

フルティが指導者として大切にしていること
〜子どもの笑顔を引き出すヒント〜

  1. 子どもよりも音楽を楽しむ
  2. 言葉よりも雰囲気で伝える
  3. みんなと一緒に音楽をすることを幸せに思う
  4. 一人ひとりの子どもたちに応じた声掛けをする
  5. 努力して伸びたところを褒める
この5つが出てきた、きっかけの質問

「よく、『笑顔で歌いなさい』って怒ってる先生を見かけるんですが、 怒られて笑顔になるのは不自然だなぁと思うんです。フルティはどんな魔法をかけているんですか?」

ゆげちゃん/『HAPPY MUSIC』p48
1

子どもよりも音楽を楽しむ

フルティ先生

「あれは教材研究の賜物よ。自分が音楽の良さに気づいていないと、教えられないもの。 知れば知るほど、面白いのが音楽よ」

『HAPPY MUSIC』p48
ゆげちゃん

「しかも、その発見した面白さを『伝える面白さ』もありますからね。 先生がワクワクしながら『早く教えたいっ』ていう気持ちは、子どもたちにも伝わるものですね」

「教材を選ぶ時間もワクワクする時間なのよ」——教材は自分で用意する、という話は FRTのRaiseにもあります。

2

言葉よりも雰囲気で伝える

ゆげちゃんが引いた、山下清の師匠の言葉

「清……お前は裸の心を持っている。だからお前の絵は人の心を打つんだぞ。 裸の心を失わなければ、大将くらいの絵が書ける。お前は裸の大将なのだ……」

それを受けて、フルティ先生

「子どもたちに『裸の心で接する』って大事よね。指導者も旅人も、同じだね

『HAPPY MUSIC』p49

だから、こうする

  • 指導者が先に歌い、先に動く
  • 言葉だけで要求しない
  • 子どもの反応を受け止める
  • 安心して試せる雰囲気を保つ
3

みんなと一緒に音楽をすることを幸せに思う

授業の前に、いつも思うこと

「次に音楽室に入ってくる子どもたちは世界の人口約74億分の40人
「地球規模で考えると奇跡的なことだと思わない? 子どもたちは、奇跡の時間と空間を共有する大切な仲間なのよ

『HAPPY MUSIC』p49
4

一人ひとりの子どもたちに応じた声掛けをする

ゆげちゃんが見ていたこと

「フルティはその子の体調や気持ち、表情を見逃さないことを、 子どもたちは知っているんだと思います」

フルティ先生

「それが『一人ひとりの子どもたちに応じた声掛け』につながるのよ」

『HAPPY MUSIC』p49

見取りは、入室のときから

  • 音楽室に入ってくる歌声・表情・学級の雰囲気を観察する
  • その日の状態で発声練習のメニューを変える
  • 気になる変化を見逃さず、短く具体的に声を掛ける
  • 必要なら学級担任と共有する(音楽科の「気づき」が生徒理解につながる)

「音楽室ってねえ、入って来ただけでそのクラスに何があったか、すぐわかるんよ」── 見取りのページへ。

5

努力して伸びたところを褒める

フルティ先生

「子どもたちには、緊張だけでなく、褒めてもらいたいという気持ちもあるのよ」
子どもは自分が努力して伸びたことを指導者に見つけてほしいものなのよ。 だから指導者は『がんばって伸びてきたこと』を見極める力もないといけない

『HAPPY MUSIC』p49
そして、ここが肝心

「そう、意味なく褒めるのは逆効果の時もある

効きにくい褒め方

  • 「いいよいいよ、やればできるよ」だけで済ませる
  • 変化していないのに褒める
  • 誰に対しても同じ言葉

効く褒め方

  • 前回の状態を覚えておく
  • 変化をひとつ特定する
  • 何がどう伸びたかを言葉にする
  • 次の挑戦へつなげる
ゆげちゃんが弱音を吐いたときの、返し

「ゆげちゃんには歌があるじゃない。ゆげちゃんの歌を歌いたくて合唱団ができるくらいだから。 褒めるとかではなく音楽そのもので人を幸せにしているわよ。 指導のことはこれから少しずつ場数を踏むと自然と身につくものよ。 大切な心さえ忘れなければね

『HAPPY MUSIC』p49。ゆげちゃん「(涙)……今日もいい一日だったなぁ」/フルティ「まだお昼よ。ライブはじまるよ」

叱ることも、設計する鬼役と仏役

フルティ先生は、本気で怒る人でもあります。ゆげちゃんが「フルティ大噴火」と呼ぶくらい。 でもそれは、ひとりでやることではないと言います。

フルティ先生

大噴火の時はサポートする大人がいないとできないよ。 家庭でもお父さんの役割とお母さんの役割があるように、 学校でも大きな声を出す先生の後には、それを噛み砕く先生がいないとね。 子どもたちに恐怖感だけを残しては何の教育にもならない

「そうそう。誰が鬼役で誰が仏役でいくかを、決めて指導しないと。

『HAPPY MUSIC』p35

ちなみに、ゆげちゃんが「あの時のフルティ大噴火にも意味があったんですね」と言ったときの返事は 「あの時ね! あれはプチよ。プチ噴火よ! まだまだ甘いな!」でした。

BEFORE EVERYTHING

そして、その手前にあるもの

FRTもおしりぼりぼりも、この2つの考えの上に載っています。

① 技より、感じる心

『技』よりも、感じる心をもっていることが一番よ!
「音楽は、心を揺さぶるものよ。感じる心の振り幅を広げるもの。だから、教えるというより、 音楽のよさやおもしろさに気づかせるといいのよ」

『教育音楽 中学・高校版』2017年4月号(連載第1回「私たちの仕事は『音楽を教える』だけではないのよ」)

② 音楽の授業は、なぜ必要か

「クラシックが好きな家庭、ロックが好きな家庭。音楽を全く聴かない家庭、 そもそも音楽プレーヤーがない家庭、音楽が嫌いな家庭もあれば、お母さんがピアノの先生の家庭も あるでしょ?

でも音楽の授業は、どんな家庭環境の子どもでも、 同時に美しい音楽にふれさせることができる。チャンスを均等に与えることができる。

『教育音楽 中学・高校版』2017年12月号。「心豊かな生活とは?」への答えは 「喜怒哀楽を感じ取れることだと思うよ。音楽には、それが詰まっている

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