合唱指導室おしりぼりぼり(7つのポイント)
フルティ先生
ここは フルティ&ゆげちゃんの合唱指導室。 音楽指導家 古川としこ(フルティ)先生——福岡県・佐賀県の中学校で35年、音楽室から子どもたちを見てきた人の指導術を、 作曲家 弓削田健介(ゆげちゃん)との掛け合いでまとめています。 出典はすべて共著『HAPPY MUSIC』(音楽之友社・第10版)と月刊『教育音楽』の2年間の連載。 はじめての方はトップから
7 POINTS / 何を聴くか

おしりぼりぼり

歌声の、どこを聴けばいいか。
音楽室で「なんか違うな」と思ったとき、この7つのどれかです。

「歌唱指導の7つのポイントを覚えやすくまとめた魔法の呪文よ」 ── フルティ先生。ゆげちゃん「おしり、痒いんですか?」/『HAPPY MUSIC』p5
指揮をするフルティ先生

音程PITCH / 距離をつかませる

よく起こること

  • 2度・3度はスムーズなのに、5度・6度・7度で戸惑う
  • 跳躍で音を当てにいって、しゃくり上げる
  • 休符をはさんだ跳躍が特に取りにくい
  • 二声の分かれ目で、主旋律につられる

どうするか

  • 指導者がピックアップして「気をつけて」と言うだけで音感はよくなる
  • 幅の開いた音程は分割して音取りする
  • ド–ソの5度なら、途中のミを歌わせて、あとからミを抜く
  • 手で階段をつくって距離感を見せる(手階段
フルティ先生の言葉

「子どもたちは、2度や3度はスムーズに歌えても5度や6度、7度の音程に戸惑うものよ。 指導者がピックアップして『気をつけて』と言うだけで子どもたちの音感はよくなる」

『HAPPY MUSIC』p5
実例は、この曲のここ / 楽譜から分析した小節つきのコツ

実例の9曲は、すべて『HAPPY MUSIC』(音楽之友社)に収録されている曲です。 小節番号は同書の楽譜に対応します。
※「越えてゆけ」は『HAPPY MUSIC』の8曲目です。同じ名前の作品集『越えてゆけ』(2026年・全16曲)とは別のもので、 こちらは表題曲として改めて収録されています。

HAPPY MUSIC
12小節目
休符をはさんだ7度音程は取りにくいので、思い切りジャンプするように声を飛ばそう
はじまりの歌
10小節目
減三和音(シ・レ・ファ)の音程をうまくとれるように、手階段で距離感をつかもう
わたあめ
26小節目
シンコペーションと6度音程のセットで難しいよ。途中に(ファ♯)を入れて和音で音取りをして、あとで抜くとうまくいくよ
未来が生まれてる
21–23小節目
ドファとレファの音程(完全5度と長6度)の違いに気づかせるために、ピックアップ練習をしよう
旅立つ君へ
18小節目
長7度音程の跳躍は要注意。和音の間の音(3度、5度)を入れて歌ってから感覚を研ぎ澄まそう
MUSIC
11小節目
6度音程は取りにくく、しゃくりやすいので、気をつけてね
越えてゆけ
9小節目
最もつられやすい分かれ目。主旋律につられないように意識して歌おう

子音CONSONANT / 合言葉は「SHINE+KT」

よく起こること

  • 言葉がぼやけて、客席に届かない
  • 「ふかれながら」が「うかれながら」に聴こえる
  • 「え」で口が横に開いてしまう
  • 語頭が乗り遅れる

どうするか — SHINE+KT

  • S=サ行:息を前歯に当てる
  • H=ハ行:お腹を使って、息を瞬時に吐く
  • I=ヤユヨ:小さな「ぃ」を前につけて「ぃや・ぃゆ・ぃよ」
  • N=ナ行:発音する前に「ん」を入れる
  • E=「え」:横に開きがち。できるだけ縦に
  • K・T=カ行・タ行:発音の前に小さな「っ」を入れる
フルティ先生の言葉

「私は、『SHINE』に加えてKとTも大事だと思ってる。 『輝け(SHINE)キター(K・T)』と覚えさせているよ。 パピプなどの唇をはじく発音も、ピックアップして練習するといいわね」

『HAPPY MUSIC』p5
実例は、この曲のここ
越えてゆけ
全体
何度も登場する「越えてゆけ」のKの発音をするときは、小さな「っ」を入れるとうまくいくよ
はじまりの歌
36小節目
「ふかれながら」が「うかれながら」に聴こえないように、「F」の発音を意識しよう
未来が生まれてる
54小節目
「未来が」の「み」が乗り遅れがちになるので、「ん」をまず作って、「M」は口唇をはじいてはっきり発音しよう
HAPPY MUSIC
5小節目
「プン」は、口びるをしっかり弾いて発音しよう
MUSIC
53小節目
「ジーーーーク」の「C」のそろえるところを話し合おう
わたあめ
38小節目
「uh」「la」「du」「di」「bi」は発音だけ練習しましょう
忘れない
全体
「SHINE+KT」の総チェックをパートごとに行い、歌詞を書いた模造紙に書き込み全体で共有しよう

リズムRHYTHM / 「な〜んだ簡単じゃん!」と言わせる

よく起こること

  • 16分音符が続くと走ってしまう
  • 楽譜が黒く見えて、その前から怖がっている
  • シンコペーションの連続で先へ行く
  • 言葉の語尾が短くなって転ぶ

どうするか

  • メトロノームを使い、リズムだけを取り出す「リズム唱」
  • タイや歌詞を一時的に外し、確認してから戻す
  • テンポを落として縦をそろえ、元の速さへ戻す
  • スウィングは三連符の1拍目と3拍目を手拍子。付点に固定しない
フルティ先生の言葉

「子どもたちは、黒の密度が高い楽譜(16分音符の連続など)に恐怖感をもつものよ。 速さは同じなのに速くなったと、勘違いしちゃう。だからメトロノームを使い、 リズムだけピックアップする『リズム唱』をするといいよ。 必ず『な〜んだ簡単じゃん!』と言うよ」

『HAPPY MUSIC』p5
実例は、この曲のここ
越えてゆけ
12小節目
タイを取って細かいリズムを確認したあと、再びタイをつけると、複雑なリズムも取りやすいよ
わたあめ
42小節目
ドミノ倒しみたいに、リレーしていこう。最後はビシッとそろえよう!
未来が生まれてる
17小節目
シンコペーションの連続は走りがちになるので気をつけよう
はじまりの歌
66小節目
転びやすいリズムです。「を」が短くなりやすいので注意しよう/夢が重なるように、追いかけっこで歌います
旅立つ君へ
27小節目
リズム読みをしっかりしてから、歌詞をつけて歌おう
忘れない
37–42小節目
ゆっくりテンポを落として、縦をそろえる練習をしよう
MUSIC
41小節目
(8分休符)ウッ!でそろえる

母音VOWEL / 響いていくのは母音だけ

よく起こること

  • 同じ母音が続くと響きが落ちて、音程も下がる
  • 「え」が平たく、暗くなる
  • 楽譜のひらがなにつられて、今日(きょ)・希望(きぼ)を「う」と発音する
  • iからeへ移るときに落ちる

どうするか

  • あえて母音だけで歌う(母音唱)
  • 響きを「前へ上へ」と意識させる。響きも音程も下がらない
  • 長音は指導者が指摘して直す
  • 響きが保てるようになってから、子音を戻す
フルティ先生の言葉

「声が響いていくのは母音だけだから、とても大事なんだよ」

『HAPPY MUSIC』p5
実例は、この曲のここ
旅立つ君へ
25小節目
同じ母音が続くと、響きが落ちやすいから「前へ上へ」と、注意をしてね
HAPPY MUSIC
24小節目
希望の「う」は「お」で歌おう。同じように母音を変えたほうが良い場所を、探してみよう
越えてゆけ
22–23小節目
母音が「i」から「e」に移るときに音程が下がりやすいので、母音唱で確認しよう
はじまりの歌
68小節目
「あなたへ」の「へ」はeの母音です。ベタっと発音しないように、縦の口でしっかり伸ばそう
未来が生まれてる
37–40小節目
「て」の母音「e」が暗くなりがち。明るく高めにとるようにしよう/2回目は、特に暗くなってしまうことがあるよ
わたあめ
28・32小節目
「ざらめ」の前の母音は伸ばしすぎないように! 遅れちゃうよ
忘れない
29小節目〜
uhやluの母音は響きがこもらないように。laは薄くならないようにね
MUSIC
47小節目
「e」の発音がベタッとならないように、口を縦に開けて歌おう

リリースRELEASE / 声の放ち方

よく起こること

  • 大きな声なのに響かない・遠くへ届かない
  • fで押して、音程が狭くなる
  • パートのバランスが崩れる
  • ヴォカリーズと歌詞が別々に聴こえる

どうするか

  • 響きの方向性を示してあげる
  • 目線の場所を決める/放物線の形を手で示す
  • 声を飛ばすイメージをつくる
  • 響きを重ねる場所を決める。音量ではなく和音の明るさをそろえる
フルティ先生の言葉

「パート別に音程が違っていても、響きを重ねる場所が決まれば、あら不思議! パートのバランスも取れ、音色もハーモニーもそろってくるよ」

『HAPPY MUSIC』p5
実例は、この曲のここ
MUSIC
25小節目
遠くを見つめて円を描くように歌おう
わたあめ
68–71小節目
わたあめのようにまあるい響きのハーモニーをつくろう/音が上下に動くけど、響きの方向を決めて歌おう
越えてゆけ
6–7小節目
母音の下行形は音程が下がりやすくなるので、手を前に、上に伸ばしながら響きを上げる練習をしよう
旅立つ君へ
20小節目
サビは、歌い出しに思いを込め、響きの方向性をそろえることができれば、自然に声量も増し、音やハーモニーに厚みが出てくるよ
HAPPY MUSIC
5小節目
休符を意識して声を遠くに飛ばすように歌おう
はじまりの歌
15小節目
「い」から「uh」に移るとき、響きが下がらないように、手を前に伸ばすように歌ってみよう
未来が生まれてる
54小節目
ラララと「みらいがうまれてる」のバランスをとるためにお互い聴き合おう
忘れない
全体
響きを重ねる場所を決めると違う言葉同士も音色が混ざり合うようになるよ

ボディーBODY EXPRESSION / 身体表現

よく起こること

  • 身体が止まると、ノリも表情も止まる
  • 「笑顔で歌いなさい」と言っても笑顔にならない
  • 振り付けをそのまま真似して、自分たちの表現にならない
  • 前奏で気持ちが入らないまま歌に入る

どうするか

  • 歌詞のイメージに合わせて、どんどんオリジナルの振り付けを
  • 音楽って、楽しい!」——この時間を必ずつくってあげる
  • 仲間と手を動かし、ビートを感じ、ステップを踏み、体を揺らす
  • 全員で一歩前に出るだけでも伝わるものがある
フルティ先生の言葉

「仲間と合わせて手を動かし、ビートを感じながらステップを踏み、体を揺らしていると、 自然と笑顔が溢れ出すのよ

『HAPPY MUSIC』p5
実例は、この曲のここ
わたあめ
38小節目
ピエロが踊っているみたいに体を揺らしながら歌おう
はじまりの歌
41小節目
手のひらを見つめると、見えないバトンを渡されていることに気づくはず。ここから後半は自由に、胸に手を当てたり、手を伸ばしたり、歌詞を表現してみよう
旅立つ君へ
41小節目
転調して迎える最後のサビは、胸に手を当てたり、手を伸ばしたり。全員で一歩前に出るだけでも伝わるものがあるよ
未来が生まれてる
1小節目
前奏中は、シャッフルのリズムに合わせて、となりの人と顔を見合わせて笑顔でスイングしてみよう
HAPPY MUSIC
1小節目
前奏から体を動かしたり、2拍目、4拍目に手拍子を入れたりしてみよう
越えてゆけ
51小節目
転調して、最後の繰り返しのところから、心のままに手を動かしてみよう
忘れない
前奏
目線をそろえよう。ゆったりとした時の流れを感じながら体を動かしてみよう
MUSIC
全体
振付動画を見て、自分たちなりにアレンジしてみよう

リリックLYRIC / 歌詞のとらえかた

よく起こること

  • 歌詞を「読んで」いるだけで、意味が身体に入っていない
  • 2番を1番と同じ声で歌ってしまう
  • 情景が表面的なまま歌う
  • 比喩を、ひとつの正解に決めつけてしまう

どうするか

  • 音楽に込められた「メッセージ」が何かを考えさせる。これは歌の命
  • 作曲家の意図や時代背景も考えさせて、歌声に変えていく
  • 楽譜のひらがなを漢字に直して「詩」として読み合う
  • 問いを投げる。答えを配らない
フルティ先生の言葉

「私は作曲家に会いに行ったり、旅をして音楽の生まれた場所に行ったりするね。 まず指導者自身が感じていないと、子どもには伝わらないから

『HAPPY MUSIC』p5 / この一文が、フルティ先生とゆげちゃんが出会った理由でもあります
実例は、この曲のここ
越えてゆけ
58–59小節目
「心の連れてく場所」ってどこだろう……と自分に問いかけよう
HAPPY MUSIC
17小節目
言葉を漢字にしてみよう。すると一つ一つの言葉がもっているイメージが、より伝わってくるよ(例:愛のかけら/明けない夜はない/未来へいま奏でよう)
旅立つ君へ
5小節目
曲の冒頭、歌い出しは話しかけるように、おしゃべりするように歌うと、思いを強調することができるよ
はじまりの歌
4–12小節目
地域の人に学校の歴史を聞いたり、過去の記念誌を読むと、歌詞のイメージをしやすいよ
未来が生まれてる
9–19小節目(2番)
目を閉じて情景を想像してみよう
わたあめ
全体
「僕」が考えていたことを考えてみたり、歌詞を見て気になる言葉について深めよう
忘れない
全体
20歳の自分や友達、後輩に書いた手紙とイメージを重ねながら歌おう
MUSIC
29小節目
世界中の人々が仲良くしているのをイメージして
REVERSE LOOKUP

困りごとから、逆に引く

いま起きていることから、どのポイントを見ればいいか。

いま起きていること
どこを見る
最初の一手
音程がじりじり下がってくる
ぼ 母音
母音だけで歌い、響きを「前へ上へ」運ぶ
跳躍が当たらない・しゃくる
お 音程
間の音を入れて和音で取り、あとで抜く
相手のパートにつられる
お + り リリース
片方ずつ成立させ、響きを重ねる場所を決める
言葉がぼやけて届かない
し 子音
SHINE+KTで分類して、ひとつずつ確認する
16分音符で走る・転ぶ
り リズム
リズムだけ取り出す。タイと歌詞を一度外す
大きい声なのに響かない
り リリース
目線と手で、響きの行き先をそろえる
ノリが出ない・表情が硬い
ぼ ボディー
前奏から体を動かす。全員で一歩前に出る
歌詞が届かない・2番が同じ
り リリック
漢字に直して詩として読む。問いを投げる
パートのバランスが崩れる
り リリース
主旋律の位置を決め、一方ずつ重ねる
声が硬い・言葉が重い
土台へ
歌う前に歩いて話す。姿勢と息の方向から
NEXT

次に読む

講習会のご依頼フルティ&ゆげちゃん