合唱指導室FRT(授業の流れ)
フルティ先生
ここは フルティ&ゆげちゃんの合唱指導室。 音楽指導家 古川としこ(フルティ)先生——福岡県・佐賀県の中学校で35年、音楽室から子どもたちを見てきた人の指導術を、 作曲家 弓削田健介(ゆげちゃん)との掛け合いでまとめています。 出典はすべて共著『HAPPY MUSIC』(音楽之友社・第10版)と月刊『教育音楽』の2年間の連載。 はじめての方はトップから
FLOW / いつやるか

FRT
歌唱指導の3ステップ

若い先生からいちばん多い質問は、これだそうです。
歌唱指導をどういう流れでやったらいいかわからない」。
だからフルティ先生は、秘伝のチェックリストを作って渡していました。

「歌唱指導は、このチェックリストをクリアしていけば完璧よ!── フルティ先生/『HAPPY MUSIC』p4
指揮をするフルティ先生

3つの段階で組み立てるFIRST → RAISE → TUNING

First

導入出会わせる

子どもと音楽をわくわく出会わせることが、授業成功の鍵となります。

Raise

展開育む・高める・引き出す

raiseには「育む」「高める」「引き出す」「成長させる」といった意味があります。 Teachers raise student and music up!

Tuning

仕上げ調律する

仕上げるのは技術だけではありません。音楽を通して、子どもたちの心の調律もできますように。

この名前の秘密

「『FRT』はふざけすぎたかな? と反省していたよ。 自分の名前をつけるなんておこがましいと言うか……」

『HAPPY MUSIC』p80「あとがき」より。F・R・T=フルティ先生ご自身の名前でもありました
F

First|導入子どもと音楽をわくわく出会わせる

導入は、扉を開けた瞬間から始まっている

「うちの子たちは、歌いながら入ってくるよ。指揮しながら入ってくる子とかも。 その日の子どもたちの状態もわかるから、それによって発声練習のメニューを変えたりもする」

『HAPPY MUSIC』p7。「音楽室の扉を開けた瞬間からHAPPYな世界へ引き込むのよ!」

言葉かけは、こんな感じ

  • 「音楽は みんなを幸せにしてきたんだよ。そんな気持ちで歌ってみよう。」
  • 「未来を見つめる一人ひとりに まだ誰にも伝えてない大切な夢があるね。それが宝物だよ。」
  • 「部活の〇〇先輩に向けて話しかけるように」
  • 「同じ地域の幼なじみの先輩と過ごした時間を思い浮かべながら歌ってごらん」

→ もっと知りたい方は 動詞で言う へ。 言い換え表と、越えてゆけの導入〜仕上げの一本の物語があります。

R

Raise|展開育む・高める・引き出す・成長させる

教材は、自分で用意する

「自分が授業を構成するから、子どもたちに音楽の魅力が伝わるものを選ばないと。 教師にとって、教材を選ぶ時間もワクワクする時間なのよ

『教育音楽 中学・高校版』2018年2月号。ゆげちゃん「えっ! また自腹ですか!」
T

Tuning|仕上げ音楽を通して、心の調律も

Tuningという言葉に、二つの意味をかけて

「仕上げるのは技術だけではありません。
音楽を通して、子どもたちの心の調律もできますように。

『HAPPY MUSIC』p4

歌い手だけを対象にしない

  • 指揮者・伴奏者へ先にノリを渡す(三連符のビートボックスで共通の拍感をつくる)
  • 全員で指揮者の真似をすると、同じノリで歌えるようになる
  • 指揮者を置かず、ダンスの得意な子を前列に配置する選択もある
  • パートごとに学年リーダーを決め、自分たちで歌声を作る楽しさを味わわせる
  • 体育館での仕上げには担任の先生方にも集まっていただく

→ 場と組織の設計は 歌声の外側にあるもの へ。

曲ごとの組み立て例BY SONG / 実際にこう組みました

HAPPY MUSIC
First
ビッグバンドの演奏映像でイメージを広げる/音楽室の楽器でウラ拍(2拍目と4拍目)のノリを体験する
Raise
4段階唱法で反復。それぞれの唱法のチェックをクリアしてから歌詞唱へ/作曲家が歌に込めた思いを共有する
Tuning
グループごとにオリジナルの振り付けを発表/強弱記号のない曲をどう表現したいか話し合う
はじまりの歌
First
「自分の大好きな場所ってない?」と問いかける。公園のブランコ、近くの神社。ずっと前に子どもだった人にとっても大切だったかもしれない場所を、なつかしむ気持ちで/前年の先輩の発表を見る
Raise
学校訓の由来や意味を調べて歌に活かす/家族(親や祖父母)の子ども時代や当時の夢をインタビューする
Tuning
この歌を歌う行事をどんな時間にしたいか、作文にしたり絵を描いたりする
MUSIC
First
振付映像でステージの自分たちをイメージ/「音楽はいつからあると思う?」と問いかけ、古代壁画・埴輪・音楽史年表で歌詞の解釈を深める
Raise
小グループで振り付けを考え、部分的にソロやソリで歌わせる/「平和」「愛」「いのち」など大切にしたい言葉をカードに書いて黒板に貼り、共有する
Tuning
録画して自分たちの歌と笑顔をチェック/指揮者を立てず、ダンスの得意な子を前列へ(活躍の場になり、士気も上がる)
わたあめ
First
わたあめを作っている映像を見る。「うわぁ! 食べたい!」が出て歌いたくなる/おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンドをどう表すか考える
Raise
小学生から大人までの演奏と自分たちを比較鑑賞/曲のリズムに乗って行進や振り付け
Tuning
三連符のビートボックスで、指揮者・伴奏者へシャッフルの取り方を先に指導。全員で指揮者の真似/主旋律と対旋律のバランスは要チェック
越えてゆけ
First
弾き語りを聴かせる。この曲は最初の出会いが肝心/生活の中の「越えたい壁」を複数示す
Raise
縦書き歌詞を模造紙に大きく書き写し、まとまりごとに話し合う/同程度の演奏・プロの演奏・自分たちの録音を比較する
Tuning
自分のこれからを考える作文を書く/難しいチェックポイント(「めぐるかぜ〜場所へ」の3小節)を念入りに仕上げる
旅立つ君へ
First
前年の卒業式のビデオでイメージを膨らませる/作曲者から子どもたちへのメッセージ映像を見る
Raise
16分音符で言葉が細かく刻まれる箇所に4段階唱法/転調を解説し、調のもつ雰囲気の違いを味わう
Tuning
強弱記号のない楽譜をどう表現するか話し合う/卒業式に向けて思い出を語り合う学級活動と連携する
忘れない
First
担任の先生の職員室でのつぶやき(「みんなが卒業してしまって寂しい」)をこっそり伝える/カレンダーに「卒業まであと〇〇日」と書く
Raise
練習室・音楽室・音楽準備室をローテーションしながら音取り/学年合唱は音楽の時間以外にも全体練習を作り、パートごとに学年リーダーを決める
Tuning
夢を書いた作文を発表しあい、卒業文集とリンクさせる/後輩に大切にしてほしい伝統をメッセージカードに書く
未来が生まれてる
First
ミュージカルの映像で同世代が歌い踊る姿を見せる/言葉かけ3例(→ 動詞で言う
Raise
ステップ→ステップしながらリズム唱→手拍子→歌と変化させる/隊形移動・足踏み・音楽室を歩く・ハイタッチ
Tuning
「自分の未来の姿」の絵を描いて教室に掲示/グループごとに振り付けの発表会

行事ごとの組み立てBY EVENT

合唱コンクール / 選曲の4ステップ

  1. 4〜6月に生徒の歌声や学年の様子を観察・分析して、音楽科が候補曲を挙げる
  2. 授業で解説しながら鑑賞させ、感じたことを書かせる(めあては「学級のよさを伝える曲を選ぼう」)
  3. 学級活動で担任の先生と一緒に話し合い、希望曲を3曲にしぼる(順位をつける)
  4. 実行委員が各学級の希望を出し合って決定。重なったら話し合い→くじ引き

卒業式 / 1年でいちばん大切にする

  1. 候補をいくつか用意し、最終的には子どもたちに決めさせる
  2. 合唱コンクールの曲を、卒業式ではバージョンアップ(混声三部→四部)
  3. 50分のうち最初の20分は4教室でパート練習
  4. 体育館や多目的ホールで全体練習。学年全員の先生が一緒に入って歌う
  5. その前に、教師集団が同じ方向を向く

入学式・年度はじめ / 校歌指導の三つのサプライズ

  1. 赴任したばかりの先生が、なぜか自分たちの校歌を歌える
  2. 生徒たちも知らない校歌の意味や、学校の歴史を語る
  3. それを高らかに歌って聴かせる

「この校歌指導ひとつで、これから先の音楽の授業への生徒たちの態度が変わってくる」

なぜ卒業式なのか

「中学校に入学してきて、3年間の総決算だもの。3年間で何を学んできたのか。 どんな音楽を表現できるのかは卒業式でわかるのよ。 音楽の授業は1年で35時間。3年で約100時間。そのまとめが卒業式なのよ

『HAPPY MUSIC』p64。ゆげちゃん「えっ。合唱コンクールじゃないんですね」
NEXT

次に読む

講習会のご依頼フルティ&ゆげちゃん