2024年1月に起こった「能登地震」を受け、3曲の合唱曲を作曲しました。
「フェニックス」「ゆめはなび」「HANABI」です。
歌詞づくりは、能登(7校)と長岡(8校)の子どもたちの力を借りながら、行いました。
子どもたちのアンケートやリクエストに応える形で、異なるメッセージを込めた3曲を作曲しました。それぞれ、「いのち」「夢」「復活」をテーマに、作曲しました。
能登と長岡で見た「空に咲く花」
2024年1月1日の能登地震から7ヶ月経った8月1日。「日本三大花火」の1つと言われる長岡花火を観ました。
3日間にわたって行われる大花火大会の1日目。長岡空襲のあった時刻に合わせて打ち上げられ、長岡の夜空に「しんなりと咲く」と表現される「白菊の花火」は、戦争でなくなった方々への「追悼」の想いが込められていることを知りました。
そして2日目・3日目の「大花火大会」で行われる様々なプログラムの中で、ひときわ盛り上がる演目がありました。「復興祈願花火フェニックス」です。
2004年の「中越地震」の1年後に始まった「復興」を願う花火は、長岡の企業協賛や市民のみなさんの募金活動など「みんなの想い」を集めて打ち上げる大型花火。東日本大震災の1年後、2012年には同プログラムが東北でも開催されるなど、多くの方々を励まし続けてきました。
長岡の花火文化や花火師さん達がつないできた歴史を知りたくなり、しばらく取材を続けました。
長岡の花火には「願い」や「祈り」が込められていることを知り、花火の美しさだけでなく、その背景にある様々な方々の想いに触れ、心が震えました。
長岡花火から1週間。友人が能登(珠洲市)で花火を打ち上げると聞きました。花火玉に、地震でなくなった家族へのメッセージを書いて打ち上げるという、追悼の花火。
そこには、地元の方々の様々な「想い」が描かれていました。その中には、元日の地震で家族を亡くされた、大間圭介さんのメッセージも、ありました。(花火玉を持っているのは、主催者で友人の大志くん。)
大間さんは、その後、金沢マラソンに出場されていました。大間さんは、たまたま、僕と同じ42歳。
歌作りをしながら、子どもたちから預かったメッセージをきちんと形にできるか・・・不安な時に、大間さんの姿に、どれだけ励まされたか分かりません。
「フェニックス」が出来上がったら、大間さんに捧げたいと思いました。
珠洲市での花火大会で印象に残ったのは、お祭りで元気に太鼓を叩く子どもたちと、そこから元気をもらっている、大人たちの姿。
能登の子どもたちと共に、復興のメッセージを込めた花火の歌を作り、みんなで歌うことで、一緒に元気になれたらと考えました。
(その後、8月末には、輪島市の高校生がこんな企画をしていました。)
輪島高校の生徒さんたちや、能登の小中学生・そして、中越地震からの復興の歴史を学んでいる、長岡の子どもたちと繋がりながら、歌作りができたらいいなと考えました。
9月末、再び能登を訪れ、珠洲市、輪島市、能登町、穴水町の5つの小中学校でコンサートをさせていただきました。事前に長岡の子どもたちから預かった「能登の子どもたちへの手紙」「花火の歌に込めたいメッセージ」を紹介しながら、能登の子どもたちからもメッセージを集めました。
中学生以上を対象としたこの歌は、「再生と復活」をテーマにした混声合唱曲となりました。
能登地震そのものを歌うのではなく、能登で生まれた「心の復興の歌」として、困難や挫折を乗り越えて、何度でも立ち上がる勇気を歌いたいと思いました。
この歌を全国で歌っていただくことを通じて、歌作りに関わってくれた子どもたちと一緒に、みんなで元気になれたらいいなと思い、全国のみなさんと繋がれる企画を現在、考えています。また、お知らせさせてください。
小学校中学年~高学年向けの『HANABI』は、子どもたちが成長とともに感じ始める「命の大切さ」「つながりの大切さ」をテーマに作曲しました。
1番では「空を染めてゆく 光の水彩画」「静寂を駆け巡り 鳴り響く鼓動」と、花火の視覚的な美しさと音の響きを表現しています。
「鼓動」という言葉には、花火に命が宿っているかのような印象を込めました。続く「ひとみを閉じても 心に咲いている」には、目に見える光は消えても、感動は心に残り続けることを表現しています。
サビでは「舞いあがれ HANABI 願いこめた HANABI」と、花火への呼びかけを通して、自分たちの願いや思いを大きく打ち上げようというメッセージを込めました。
「照らされた 笑顔も 涙も 抱きしめ合えるように」という部分は、喜びも悲しみもすべてを受け入れ、分かち合える関係性への願いを表しています。
2番では「僕らの命も きらめく夢花火」「憧れで響き合う 光のシンフォニー」と、私たち一人一人の命を花火に重ね、その輝きが響き合って大きな光となることを歌っています。
「なないろの星座を 世界に灯そうよ」では、様々な個性や思いが一つになって、世界に希望の光を灯すイメージを描きました。
能登と長岡の子どもたちからの「元気が出る歌をつくってほしい」というリクエストを受け、カウントダウンや「いけー!」といった掛け声も取り入れました。
小学校低学年に向けて書きました。この時期の子どもたちは、全身で音楽を感じ、表現することが得意です。また、具体的な活動を通じて想像力を育んでいく時期でもあります。そこで、花火という視覚的で魅力的な題材を用いて、音楽、言葉、動きが自然に結びつく曲づくりを心がけました。
全体の構成は、花火大会の流れに沿って展開します。「5・4・3・2・1!」というカウントダウンで期待感を高め、「ちいさなたねが ひゅーーーん おおきなゆめが どーーーん」で花火の打ち上げと開花を表現します。続く「ひかりのはくしゅ パンパンパンパン えがおのほしが キラキラキラキラ」では、手拍子や指先の動きを取り入れ、友だちと一緒に表現する楽しさを味わえます。
特に大切にしたのは「みんなで」という要素です。カウントダウンを声を合わせて行ったり、手拍子を一緒に打ったり、最後は手をつないで輪になったりと、様々な場面で友だちと心を通わせる機会をつくりました。また、体全体で表現する楽しさを味わえるよう、擬音語や基本的な動作を多く取り入れています。
楽器を使った表現や、グループでの活動など、様々な展開も可能です。子どもたちの自由な発想で、新しい表現方法を見つけ出してくれることも楽しみにしています。この曲が、子どもたちの想像力、協調性、リズム感、表現力を育む一助となることを願っています。
体の動きについて
「小さな種がひゅーーーん」でしゃがんで伸び上がり、「大きな夢がどーーーん」でジャンプするなど、歌詞に合わせた動きを取り入れると楽しく表現できるかと思います。
楽器の活用について
タンバリンや鈴、小太鼓や鉄琴などで花火の表現を豊かにできます。
友達との関わりについて
「手をつなぐ」「輪になる」といった動きを通じて、友達と協力する場面を作れます。
創造力を育む活動として
「どんな夢を花火に乗せたいか」を子どもたちに考えてもらうとイメージが広がります。
それぞれの学級で、工夫を加えながら楽しんでいただければと思います。
長岡の子どもたちのメッセージを集めてくださったのは、長岡市立大河津小学校の平出久美子先生です。
前任校・新潟大学附属長岡小学校にて、別シリーズ「平和ソングス3部作」の研究発表&資料提供をしてくださったご縁に続いて、今回、多大なるご協力を賜りました。
平出先生による花火3部作の解説、指導案などの資料も、今後このページにてアップしていく予定です。
2024年12月26日 教育芸術社さまの雑誌「ヴァン」より「ゆめはなび」「HANABI」が発表となります。メインテーマ「フェニックス」は2025年に別の形で発表となるようです。また新しいことが決まりましたら、公式ラインより、お知らせいたします。(ゆげたけんすけ)
「長岡の子どもたち」 大河津小学校 関原小学校 希望が丘小学校 川崎小学校 日越小学校 上通小学校 阪之上小学校 新潟大学附属長岡小学校 平出久美子先生 「能登の子どもたち」 宝立小学校 穴水小学校 松波小学校 輪島合同6校 門前中学校 輪島高校 七尾高校 上丸くん 黒田眞由美先生 今井先生 松本先生 奥野さん 呉羽さん&教育芸術社さま 大志くん 大間圭介さん