大漁(金子みすゞの詩)
大漁に、小学生のためのメロディをつけました。音楽を聴きながら読んでいただけると、幸いです。
金子みすゞさんの詩「大漁」は「子どもたちの想像力を広げてくれる詩」と言われていて、小学校の教科書にも掲載されています。
自分中心、人間中心の視点を大胆にひっくり返してくれる、短いながらも深い詩です。
「浜の喜び」と「海の中のかなしみ」を両方感じることで、「大漁とはこういうことだったんだ」と深く心に残る詩です。
こんにちは。作曲家の弓削田健介(ゆげたけんすけ)です。
今日は「大漁」詩と短い解説をしていきます。
普段は小中学生のための合唱曲を作るお仕事をしています。(こんな歌を作っています)
「大漁」全文
「大漁」の詩全文はこちらです。
朝焼け小焼だ、 大漁だ
大羽鰮(おおばいわし)の 大漁だ。浜は祭りの ようだけど、
海のなかでは 何万の、
鰮(いわし)のとむらい するだろう。
※金子みすゞさんの写真と詩はJULA出版社内「金子みすゞ著作保存会」の了承を得て掲載しています。
「大漁」解説
「大漁」について解説します。
前半と後半の視点が違い、激しいギャップが特徴的です。
喜びと悲しみの対比
詩「大漁」の前半は私達人間側の喜びを、後半は魚の悲しみを表しています。
漁師や漁師の家族・村にとっては、たくさん魚を獲れたら美味しいご馳走が食べられますね。
しかし一方で、海の魚「いわし」にとっては自分や仲間の命が途絶える瞬間。
この対比(コントラスト)が際立っていて、「自分が嬉しくても、立場が変われば違う感情を持っているかもしれない」と、一瞬はっとさせられます。
「想像力を広げてくれる詩」と呼ばれている理由がわかりますね。
また、「世の中のすべてのことは表裏一体である」という真理を分かりやすく伝えています。
浜の喜びと海のかなしみ、目に見えることと見えないこと、生きることを死ぬこと・・・
どんなできごとも、2つで一つである。ということにも気付かされます。
「大漁」のリズム感
詩「大漁」は僕たち日本人の詩の原点と言われている、和歌や俳句のように、5音と7音で構成されています。
このリズムは、日本語の中でもっともリズム感のある音数と言われていて、遺伝子レベルで日本人にとって「心地よいリズム」として浸透していますね。なにかを訴えたいときにも便利なので、交通標語や広告などでもよく使われています。
決められた音数で作られた詩を「定型詩」といいますが、限られた音数の中で、選びぬいた言葉で、ここまでの気づきを与えられる詩をかける金子みすゞさんは、すごいなぁと思います。
声に出すとまるで歌のようにしっくりくるため、子どもたちも朗読の楽しさを感じられるでしょう。
知らない言葉を調べてみよう
詩「大漁」には子どもたちには馴染みのない言葉も出てきます。
「朝焼け小焼け」「大羽鰮(おおばいわし)」「とむらい」など、大人でも普段あまり使わないですよね。
ちなみに「小焼け」自体には意味は無いんですよね。実はほとんどの辞書に、載っていません。
童謡「夕焼け小焼け」にも含まれている言葉ですが、前の語と同じ響きを持たせているだけなんだそうです。
「りすりすこりす」「仲良しこよし」などもそうですね。
作品の理解を深めるためにも、知らない言葉を調べる習慣を身につけるためにも、辞書を引いてみましょう。
「大漁」曲・練習音源
この度、金子みすゞさんファンの作曲家として「大漁」にメロディをつけてさせていただきました。
金子みすゞ記念館を訪れ、取材をしながら、これまで先輩作曲家が作られた歌を聴きながら、自分なりに「小学生が楽しく歌えるものを」という目標を掲げて、作曲させていただきました。
子どもたちが歌いやすい音域の2部合唱になっています。国語や道徳などの授業との連携や、保育園、幼稚園との合同行事などで、ぜひ、歌ってみてください。
教室で練習がしやすいように、練習用音源を制作しました。
「大漁」練習音源(ピアノ)
「大漁」練習音源(ソプラノ)
「大漁」練習音源(アルト)
まとめ
金子みすゞさんの詩「大漁」について解説しました。
人間と魚の両方の立場に立つ作品はなかなか無いですよね。
その対比は僕たちの想像力を広げてくれます。
想像力は良好な対人関係を構築するためや新しい世界を広げるためにも大切とされています。
子どもたちに紹介するだけでなく、自分たち大人も、ときどき思い出したい詩ですね。