「ゆげちゃん、困ったことがあったら、いつでも電話してね!俺は365日、24時間営業の男やっけん!!」熊本県のPTA大会での演奏を終え、帰路に着く車窓越しにかけてくれた元気な藤木さんの声。見えなくなるまで手を降ってくれた笑顔。背筋がピンと伸びていて、さわやかで、太陽のように温かい。「男も惚れる晴れ男」とは、藤木さんのことだ。
藤木さんとは、PTAを通じて出会った。
「恐竜の町」で有名な熊本県御船町で「藤木屋」という歴史ある葬儀屋の経営者(職業柄24時間営業というのも、大げさな話ではない)でもあり、御船町観光協会の会長もしている地域のリーダー。葬儀屋さんを通じて多くの「いのち」の輝きに触れてきた「おくり人」だからこそ、まわりの人の「いのち」に優しい眼差しと元気を注いでくれているように感じる。
その年の年末。僕は佐賀県の山に籠もり、1年間の振り返りをする合宿を行っていた。全国で出会った新しい「仲間」に声をかけて、みんなで交流をしながら行う毎年恒例の行事だ。
そんな携帯の電波も届きにくい、電灯もない合宿所で、事故が起こってしまった。仲間の一人が真っ暗な道で転んで、怪我をしてしまったのだ。真夜中で、救急病院しか空いていない。車を運転できるメンバーはすでにお酒を飲んでいて誰も運転できない。その真夜中24時のピンチに到着したのが、その日の仕事を終え熊本から到着した、「24時間営業男」の藤木さんだった。
あの時、藤木さんが救急病院に連れて行ってくれなかったら・・・と思うとゾッとする。病院で応急処置を終え、僕たちを送ってくれた、真夜中の車内。「お礼をさせてください」と言っても聞いてくれない。
「藤木さんにお礼させてもらえないんだったら・・・。そうだ!藤木さんは町の観光協会の会長でしたよね!・・・じゃあ僕はもっと有名になって、御船町のために恐竜ソングを作ります。それで、その歌は『みんなのうた』に選ばれて・・・御船町にいっぱい人が来てもらえるようにします!」と言うと、バックミラー越しに、藤木さんがニコッと笑った。そして、藤木さんは合宿に参加できないまま、さっそうと、御船町に帰って行った。
それから数年経った春。熊本地震が起こった。その時僕は、佐賀の仲間たちと、ちょっとだけの物資を集めたり送らさせてもらったくらいで、それ以上のことができなかった。あんなにお世話になった藤木さんが、春に生まれた「新しい御船町の町長」として奮闘している様子を、ネットで、観ていたのに。
久しぶりにつながった電話で「町長になって最初の仕事が、震災からの復興になった。人と人のつながりの中で生かされてることを改めて感じてるところ!ゆげちゃん、今は来なくていい。俺ら、がんばるから!見とって!もう少し落ち着いたら、歌いに来て!」と言ってくれた。
あれから4年。今回のビデオを作ることになった時、真っ先に「御船町」のことが頭に浮かびました。相変わらず無名のミュージシャンで、みなさんを元気にする力も全然無く、本当に恥ずかしい限りです。でも「今できることを精一杯やる」でたくさんの人に支えられ、続けさせてもらえた、ささやかな音楽活動です。(ありがとうございました。)
2本のビデオを通じて、熊本の自然の魅力を伝えられたら・・・そして、1人でもいいから、このビデオをきっかけに、阿蘇や御船町に遊びに行ってくれたら・・・。そんな願いを込めました。観ていただけたら、嬉しいです。
最後になりましたが、
このビデオを作るきっかけをくれた藤木さん。
本当に、ありがとうございました。
p.s.
ビデオの撮影を終えたあと、コロナショックが全国に広がり、この動画をアップしている熊本地震からちょうど4年目の4月16日・・・。全国に「非常事態宣言」が出されました。いまごろ藤木さんは、町民のみなさんのために「24時間営業男」している頃ですね。お身体大丈夫でしょうか・・・
だけど僕は、藤木さんに「心配だから寝てください」とは言いません。
ファイト!!藤木さん!!!
僕だけじゃない、全国の仲間たちが、
藤木さんの笑顔に元気もらった人たちが、
いつも藤木さんのこと、応援していますよ!!!
晴れ男、藤木正幸、ファイト!!!