たむらまろ・スペシャルアカペラバージョン
風、匂い、気持ち、この3つの共通点がなにか分かりますか?
答えは”見えない”もの。
金子みすゞさんの詩「星とたんぽぽ」には、”見えない”ものに注目し、その存在を知ってほしいというメッセージが込められています。
こんにちは、作曲家の弓削田健介(ゆげたけんすけ)です。
今日は「星とたんぽぽ」詩全文や解説を紹介します。
「星とたんぽぽ」全文
「星とたんぽぽ」の詩全文はこちらです。
青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。ちってすがれたたんぽぽの、
かわらのすきに、だァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
※金子みすゞさんの写真と詩はJULA出版社内「金子みすゞ著作保存会」の了承を得て掲載しています。
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ピアノ伴奏
「星とたんぽぽ」解説
「星とたんぽぽ」について解説します。
目に見えないことを見る
見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。と、みすゞさんが歌ったのは、1925年。
その18年後にサン・テグジュペリは「心で見なければ何も見えないよ。かんじんなものは、目に見えないんだ」と書きました。『星の王子さま』の中で一番有名なフレーズです。
時間と場所を超えて、たいせつな「まなざし」は受け継がれていくのですね。
繰り返しの違い
詩「星とたんぽぽ」は5音と7音で構成されています。
七五調のリズムで心地よい響きです。
注目したいのは「見えぬけれどもあるんだよ 見えぬものでもあるんだよ」部分の繰り返しです。
「見えぬ”けれども”あるんだよ」と「見えぬ”ものでも”あるんだよ」と表現を変えているのはなぜでしょうか。
この違いによって、金子みすゞさんの伝えたいことが読み取りやすく、詩の意味を理解しやすくなります。
古語表現の想像・理解
詩「星とたんぽぽ」には普段使われない言葉が含まれています。
「みえぬ」・「すがれた」・「かわら」・「すき」は昔の言葉(古語)です。
小学生には難しいかもしれませんが、最初から意味を伝えるのは避けましょう。
黙読・朗読を通して、子どもたちにどのようなイメージを思い浮かべたか聞いてみます。
このとき、正しいか正しくないかは重要ではありません。
「分からない言葉を想像する、それから調べる」訓練は、今後のコミュニケーションや読書の際に役立ちます。
“見えない”ものとは
詩「星とたんぽぽ」は目に見えないものの存在を肯定しています。
私達はつい、見えないもの・分からないものを否定したり無視したりしてしまいます。
生徒には他にどんなものがあるか聞いてみましょう。
例えば、人の気持ち。
相手の気持ちは見えないので、「ひどい言葉を言っても大丈夫」と自分の都合の良いほうに解釈します。
ですが、詩「星とたんぽぽ」の通り、見えない=存在しないとは限りません。
見えるもの・見えないもの両方を感じられる大人になって欲しいですね。
昼の星
半世紀もの間、忘れ去られていた金子みすゞさんの存在を発掘し、世に出した「みすゞ蘇り」の立役者で詩人の矢崎節夫は、「星とたんぽぽ」について、このように話されていました。
「昼の星を見に来られませんか?」と、物理学者尾の佐治晴夫先生に誘われて天文台に行ったときのことです。
肉眼では、真っ青に見える空は、天体望遠鏡で見ると、白くかすんでいました。その真ん中に、ぽつんと一点、白銀に輝いて昼の星はいました。あるのではなく、いたのです。静かに、じつに静かに居たのです。それは、わたしの想像を超えるのものでした。
後日、風の少しある日に見せていただいた昼の星は、風のそよぎとともに、金色に輝く炎がちらちらとゆれていました。
一度、昼の星を見てからは、ふと昼の空を見上げては「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ」とつぶやくわたしがいます。
素敵なエピソードだなぁと思いました。昼の星の映像を見つけたので、子どもたちと教室で御覧ください。
まとめ
金子みすゞさんの詩「星とたんぽぽ」について解説しました。
目に見えないからと言って、”無い”とイコールではありません。
世の中にはたくさんの見えないものが存在します。
見えないものも想像できると、人にやさしく暖かくなれるでしょう。
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