ホスピスで出会った世界一やさしい歌。
「世界で一番やさしい歌は、お母さんが子どもを抱っこして歌う子守唄」そんな風に聞いたことがあって、確かにそうだなぁと、ずっと思っていました。
でも、ホスピスで演奏していたある日。ベッドごと聴きに来られていた患者さんのすぐそばで、家族の方が寄り添って、患者さんの大好きだった歌を、歌っている姿を見ました。
その光景を見た時に「ああ。この歌も、世界で一番やさしい歌だ。」と思いました。「愛」って、こういうことなのかな。と思いました。その光景を見ていると、自分もたくさんの「愛」を家族にもらって、こうして今、生きていられるんだなと思いました。
ホスピスから大学への帰り道。自転車をこぎながら、口ずさんだメロディが、この曲を作るモチーフになりました。自分でも、その照れくさい言葉が自分から出てくるのを、不思議に思いました。両親への感謝の気持ちと、いつかきっと出会う、大切な人へ手紙を書く気持ちで、初めて「愛」という言葉を使った歌です。子どもたちに使っていただく楽譜に収録することに迷いはありましたが、自分にとって大切な歌だったので、今回の楽譜集の最後に、一段譜だけ、掲載させていただきました。
やさしい歌(歌詞)
街を見渡す
丘の途中で
聴こえない歌を歌う
すぐそばにいる
君だけにしか
聴こえない歌を歌う
ヘタクソでつながらなくて
慣れない言葉で
つむぐのは、精一杯の
優しい歌
愛しています
愛しています
ただそれだけの歌
悲しい時も
つらい時でも
僕が生きてこれたのは
胸に消えない
優しい歌が
いつも聴こえていたから
暖かい腕に抱かれて
小さな耳で
聴いたのは子守唄より
優しい歌
愛しています
愛しています
ただそれだけの歌
作詞・作曲:弓削田健介