「みんなちがって、みんないい。」
誰もが聴いたことのあるフレーズではないでしょうか。
大正時代の童謡詩人、金子みすゞさんの詩「わたしと小鳥とすずと」の最後の一文です。
こんにちは、作曲家の弓削田健介(ゆげたけんすけ)です。
今日は「わたしと小鳥とすずと」詩全文や解説を紹介します。
小学生向けに作った合唱曲「わたしと小鳥とすずと」
「わたしと小鳥とすずと」全文
「わたしと小鳥とすずと」の詩全文はこちらです。
私が両手をひろげても
お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥は私のやうに
地面を速くは走れない私がからだをゆすっても
きれいな音は出ないけど
あの鳴る鈴は私のやうに
たくさんな唄は知らないよ鈴と、小鳥と、それから私
みんなちがって、みんないい
※金子みすゞさんの写真と詩はJULA出版社内「金子みすゞ著作保存会」の了承を得て掲載しています。
「わたしと小鳥とすずと」解説
「わたしと小鳥とすずと」について解説します。
子どもたちの理解を深めるヒントになれば幸いです。
「私」の順番が変わってる?
「わたしと小鳥とすずと」というタイトルの通り、まず「私」の視点から始まります。
そして「私」・「小鳥」・「鈴」それぞれのできることとできないことを説明します。
ですが最後には「鈴と、小鳥と、それから私」の順番になります。
なぜ順番が変わったでしょうか?
最初は自分(私)に重点が置かれていますが、まわりを見渡すうちに「あなたがいて私がいて、どちらも大切」という考えに至ったのではないかと言われています。
自分の存在は自分以外の誰かがいて、初めて成り立ちます。
仮に「私と、小鳥と、それから鈴、」に入れ替えてみると、私中心・わがままのような印象を受けますよね。
順番が変わったことで、「私」はみんなのおかげで存在できるんだと謙虚な気持ちを表しているそうです。
「みんな」って誰?
「みんなちがって、みんないい。」の部分に注目しましょう。
「みんな」とは誰を指すのでしょうか?
「私」と「小鳥」は生き物ですが、「すず」は生き物ではありません。
通常、人間以外は「みんな」に含まれませんよね。
ですが、金子みすゞさんは命があるかどうかに限らず、この世に存在するひと・もの達を「みんな」と呼んでいます。
詩に「鈴」が含まれている通り、動物も無機物も関係ありません。
「人間とは話せない存在も、適当に扱ってはいけないよ」というメッセージが読み取れます。
「わたしと小鳥とすずと」曲
この度、金子みすゞさんファンの作曲家として「わたしと小鳥とすずと」にメロディをつけてさせていただきました。
金子みすゞ記念館を訪れ、取材をしながら、これまで先輩作曲家が作られた歌を聴きながら、自分なりに「小学生が楽しく歌えるものを」という目標を掲げて、作曲させていただきました。
子どもたちが歌いやすい音域の2部合唱になっています。国語や道徳などの授業との連携や、保育園、幼稚園との合同行事などで、ぜひ、歌ってみてください。
教室で練習がしやすいように、練習用音源を制作しました。
練習用音源(ピアノ伴奏)
練習用音源(ソプラノ)
練習用音源(アルト)
出典:金子みすゞ童謡集(JULA出版局)
まとめ
金子みすゞさんの詩「わたしと小鳥とすずと」について解説しました。
シンプルな言葉でつづられ、国語の教科書にも載っているため、小学生から中学生・高校生にも人気の詩です。
授業で触れるときは「私」の順番や「みんな」の意味を子どもたちに考えさせてみてはいかがでしょうか。
短い詩から、金子みすゞさんの温かい眼差しを感じ取れるでしょう。