【作者からのメッセージ】
「中学二年の時に不登校になったから、大学に来るのに少し遠回りしました。でも、自分の夢を見つけるのには、一番の近道でした。」大学時代の大親友で、2つ年上の同級生「秋山くん」が、そんな風に語ったのは、大学の大講義室で行われていた「不登校の子を持つ親の会」主催の講演会。不登校を乗り越えて、夢を見つけて、がんばっている秋山くんがそこにいるだけで、秋山くんの講演に耳をかたむけている「親の会」のみなさんは元気をもらっているように見えました。
講演の最後に、「父とのエピソードを紹介します。」と言って、不登校時代に何度もぶつかっていたお父さんとの話をしてくれました。いよいよ家出するくらい大げんかをした秋山くんと、お父さん。玄関から出ていこうとする秋山くんを追いかけてきたお父さんが一言。
「出て行くなら、出ていけ。でも、その上着は脱いでいけ。それは俺が買ってやったもんだ。」上着を脱いで、出ていこうとすると今度は「その靴も、靴下も、ズボンもそうやろうが。置いていけ。」とお父さん。パンツ一丁メガネひとつになった秋山くんは、こう言ったそうです。「あんたからもらったもん、全部置いていく。殺してくれ。この命もあんたからもらったもんだ。」
お父さんが近寄ってきました。「また、殴られる。」そう思って目を閉じると、お父さんは突然、秋山くんを抱きしめました。
「父は震えていました。声をころして泣いていたんです。それまで父が泣くところなんて、一度も見たことありませんでした。その父の腕の中で、ああ、この人のこと少しは信じてもいいのかもなと初めて思いました。」
後に秋山くんのご両親とお会いする機会が何度もありました。とても優しいご両親でした。お母さん曰く、お父さんはものすごく不器用で、口下手。お父さんは「あの頃は、どうしていいかわからなかった。」と教えてくれました。
「あなたにありがとう」は秋山くんの誕生日に、プレゼントの代わりに作った曲です。PTAや「不登校の子を持つ親の会」などで出会うお父さんやお母さんからの「歌いたい」とリクエストがあり、今回合唱譜として掲載させていただきました。卒業式や2分の1成人式など、「親から子どもたちへのメッセージ」を伝える場面で、使っていただけたら幸いです。
【不登校と向き合うヒント集】
秋山くんの講演会をベースに、不登校で悩んでおられる本人さん、お家の方、先生方向けにインタビューを収録しました。こちらから聴くことができます。
※大学を卒業と同時に佐賀県の小学校教員になった秋山くん。自身の不登校の体験と、先生一人、生徒一人の佐賀県唐津市向島小学校での体験をまとめた「最後の小学校」(講談社)を出版しています。こちら
【指導にあたって】
「あなたにありがとう」。ストレートなメッセージに、優しく愛情に溢れたメロディーが添えられています。歌いだす前の休符では、思いをいっぱい込めて体全身に息を入れて歌うようにしましょう。また歌い始めの言葉を丁寧に歌うことで、さらに温かい思いが伝わります。(浦田千尋先生)
There was a request from the fathers and mothers I met at the "Parents with children who did not attend school" and other requests, "I want to sing," and I arranged the chorus.
It seems to be used in situations such as graduation ceremonies and half-life ceremonies that convey "messages from parents to children."