絵本「いのちのまつり」の作者が言葉を紡いだ「いのちの歌」
東京書籍・光村図書・日本標準各社の道徳の教科書副読本に採用されている絵本「いのちのまつり」。作者の草場一壽さんとの出会いは、大学を卒業したばかりの春でした。
僕のホスピスでの音楽活動を応援して下さっていた地元のテレビ局の方が、「今度教科書に載ることになった絵本の作者が、次の作品にテーマソングを書ける人を探しているらしい。チャレンジしてみるか?」と言って、紹介してくださったのでした。
始めて伺った草場さんの工房で、緊張しながら、自己紹介をした後、工房に置いてあるピアノを弾きながら、この曲集に収録されている「やさしい歌」を歌いました。学生時代から演奏に行っているホスピスで自分なりに感じた「いのち」のことを歌う、その静かな曲をじっと聴いてくださったあと、「よし、やろうか!」と言ってくださり、草場さんとのお仕事が始まりました。
絵本「いのちのまつり」シリーズは、子どもたちだけでなく、教育関係の仕事をされている大人たちにもとても人気でした。草場さんは全国から殺到している講演依頼に、講演と絵本の朗読、そして音楽の3つをセットにした「いのちのまつり講演隊」という形で応え、僕はその音楽担当として、日本中に連れて行っていただきました。この「いのちのまつり講演隊」を通して出会った全国の教育関係者のみなさんとのつながりが、現在の日本中旅をしながらの音楽活動の原点となっています。
※作者の草場さんと「いのちのまつり講演隊」
「幼い子どもたちに命の大切さを言葉にして説明するのは難しい。しかし、絵や音楽などのアートの力を借りれば、心に直接メッセージを響かせることができる。目には見えないものや言葉にできない大切なものを表現し、伝えることが、アーティストの役割なのだから、ゆげちゃんは音楽で、それにチャレンジしていきなさい。」そんな風に教えてくださった草場さん。音楽活動の礎となった言葉であり、永遠の課題でもあります。
テーマソングの「いのちのまつり」は草場一壽さん本人の作詞。歌詞に出てくる「いやさか」という言葉は、「ずっとずっと、栄えていきますように」という古い日本の言葉だそうです。
指導にあたって
歌詞に込められた思いが美しい旋律にのってストレートに伝わるこの歌は、聴く人の心を揺さぶります。歌っているうちに祈りにも似た感覚を覚えるのもこの曲の魅力です。語りかける部分と歌い上げる部分を意識した歌い方を心がけると、より印象的な演奏になるでしょう。